【ボクシング】3連続KOに見る、村田諒太の危険性 (3ページ目)

  • 原功●文 text by Hara Isao photo by AFLO

 重要なのは、世界戦に打って出る時点で、村田がどれだけの力量を身に着けているかということだ。これは単に、スピードやパワー、耐久力だけの問題ではない。今後に予定される7戦前後で、実際の試合で起こりうる可能性のひとつひとつを埋めていかなければならないのだ。たとえば、試合中に顔面に傷を負った場合、動揺せずに対処できるかどうか。ダメージを負った劣勢の状態から巻き返すことができるかどうか。競り合った状況下でも耐えうるスタミナがあるかどうか。長身のパンチャーをどうさばくのか。スピードのあるサウスポーの強打者とどう対峙するのか……。それら課題を挙げたら、キリがないほどだ。3月1日にロマチェンコの挑戦を受けるWBO世界フェザー級王者のオルランド・サリド(33歳・メキシコ)は、「プロのボクシングに必要なのは、強靭な肉体と精神、確かな目的意識、そして経験だ」と話している。55戦のキャリアを持つ叩き上げのプロとして、サリドの言葉は十分に重みのあるものだ。

 村田の場合、具体的に分かりやすく言うならば、現在の主要4団体のミドル級世界王者たち――WBA王者ゲンナジー・ゴロフキン(31歳・カザフスタン/ドイツ、29戦全勝26KO)、WBC王者セルヒオ・マルチネス(39歳・アルゼンチン、55戦51勝28KO2敗2分)、IBF王者フェリックス・シュトルム(35歳・ドイツ、45戦39勝18KO3敗2分1無効試合)、WBO王者ピーター・クイリン(30歳・アメリカ、30戦全勝22KO)――と、対等以上にやり合える総合力を挑戦時に身に着けていなければならない。しかも期限は、「7戦前後で1年半」。このハードルは、決して低くない。むしろ、極めて高いといっていいだろう。3戦連続KOという派手な見出しに目を奪われ、背景にあるハードルの危険性を見逃してはいけない。

 今回のナシメント戦を見ても分かるように、村田がプロとして長足の進歩を遂げていることは間違いない。村田は、「今年の暮れには世界挑戦権のある位置(15位以内)にいたい」という具体的な目標を設定している。その意味でも、5月か6月に国内で予定される4戦目、そして9月にシンガポールで計画される5戦目の内容と結果は、今回の試合以上に重要となってくる。村田自身の力量アップはもちろんのこと、今後はチーム・ムラタの勝負時期の設定にも注目していきたい。

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