【ボクシング】3連続KOに見る、村田諒太の危険性 (2ページ目)

  • 原功●文 text by Hara Isao photo by AFLO

 しかし、あまりの完勝ゆえに、逆に不安も感じてしまう。陣営の設定する勝負の時期が、試合をするたびに前倒しになってきているからだ。昨年8月のプロデビュー時、村田本人は、「3年のスパンで自分のプロとしての将来を見極めたい」と話していた。つまり、3年前後で世界挑戦が可能な位置に到達しているかどうか――というニュアンスだった。ところが、昨年12月の2戦目の後には、「3年よりも早く勝負することになるだろう。10戦した時点でどこにいるか、それ次第」(本田氏)と変化していた。そして第3戦後の今回は、「来年後半、10戦」という具体的なラインが表に出てきたのである。

 これには、村田が契約を結んでいるアメリカの大手プロモーション会社、トップランク社のボブ・アラム・プロモーターの意向が大きく反映されている。アラム氏は1980年代にシュガー・レイ・レナード(アメリカ)やマービン・ハグラー(アメリカ)、トーマス・ハーンズ(アメリカ)といったスター選手を擁して数々のスーパーファイトを主催し、1990年代にはオスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)をトップスターの座に導いた実績を持っている。6階級制覇を成し遂げたフィリピンの英雄マニー・パッキャオも、アラム氏に見出された選手のひとりだ。その臭覚と手腕が近代のプロモーターの中で群を抜いていることは、多くの関係者が認めるところである。

 そのアラム氏は、村田を含めたロンドン五輪の金メダリスト4人と契約を交わしている。その中のひとりであるフェザー級のワシル・ロマチェンコ(26歳・ウクライナ)は、早くも3月1日にプロ2戦目で世界王座に挑戦することになっている。また、村田と同じ2月22日にマカオでリングに上がり、プロ4戦目で7回TKO勝ちを収めたフライ級の鄒市明(ゾウ・シミン=32歳・中国)に関しても、アラム氏は、「今年の11月に世界挑戦を計画している」と話している。今年83歳になるアラム氏は1980年代の3人(レナード、ハグラー、ハーンズ)や、1990年代のデラ・ホーヤのように、長期スパンで選手を育成する方法とは異なり、近年は明らかに短期スパンでのスター育成を狙っている。「自身の年齢からくる、焦りがあるのかもしれない」という、うがった見方もあるほどだ。いずれにしても、村田もこうした流れの中にいるわけで、「来年後半、10戦」というプランは、同期のロマチェンコや鄒市明と比較した場合、決して早いとは言い切れないのである。

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