【ボクシング】TKO勝ちも、村田諒太に課せられた多くのノルマ (2ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao 矢野森智明●写真 photo by Yanomori Tomoaki

 プロ2戦目ということを考えると、スタミナ面では二重丸をつけてよさそうだ。村田本人も、「8ラウンド戦って最後にTKOできたことが大きい。(勝負は長引いたが)スタミナ面ではポジティブにとらえたい。10ラウンドでもいける」と満足そうだった。プロモートや海外とのコーディネートなど、村田を全面的にサポートしている帝拳ジムの本田明彦会長も、この点を高く評価している。

「アマチュアで3ラウンドしか戦ったことのない選手が、プロとしての練習を始めてから6ヵ月ということを考えれば、十分に合格点を出せる。あのまま判定勝負になっていたら別だが、最後に連打で仕留めたのだから最高の結果。この時点で8ラウンドを経験した自信は大きいはず」

 その一方、2戦目の出来について、厳しく評価する声もある。元東洋フライ級王者の肩書を持ち、半世紀以上もボクシングと関わっている評論家の矢尾板貞雄氏は、渋い表情で試合を分析した。「村田はデビュー戦よりも悪くなった。パンチのキレがなく、右を打つときに踏み込みがない。だから(パンチが)当たっても効かないという悪循環になっていた」というのだ。その原因は、「バランスの取り方が悪いから」と話す。ただ、この点は村田も自覚しており、キューバのナショナルチームコーチを務めたこともあるイスマエル・サラス・トレーナーの指導を受けて、矯正に努めている最中だ。まだまだ途上だということは、裏返せば、その点で大きな伸びしろがあるということでもある。

 前述のように、今後はスピードも身に着ける必要があるだろう。村田も、「たしかにスピードに関しては海外のトップ選手よりも劣ると思う」と認めている。そのうえで、「自分のストロングポイントで勝負するつもり」とも話している。「僕には前に出る圧力、フィジカルの強さがある。相手を下がらせる自信はある」というのだ。

 たしかに、この考えには一理あるとは思う。現に、日本に初めて世界ミドル級王座をもたらした竹原慎二は、パワーという自身のストロングポイントを生かし、重戦車のようなホルヘ・カストロ(アルゼンチン)に打ち勝ったという例がある。しかしその半年後、竹原はウィリアム・ジョッピー(アメリカ)のスピードに持ち味を封じられ、世界タイトルを奪われた事実を反例として挙げることもできる。世界を舞台として見据えるならば、やはり海外のトップ選手に伍するスピードは必要だろう。なにより、パワーにスピードが加われば、総合的な戦力は大きくアップするはずだ。

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