2013.12.05

漫画家・猿渡哲也が選ぶ、新日本プロレス名勝負ベスト3

  • “Show”大谷泰顕●文 text by “Show”Otani Yasuaki

「新日本の柴田勝頼に生き様を感じる」

――見方が変わってきた訳ですね。ところで、いろんなプロレスラーと交友関係もあると思うんですが、思い出に残っているエピソードはありますか?

猿渡 船木誠勝さんに絞め落とされたことがあります。昔、彼はうちに来ると必ず僕を絞め落としてましたよ。1日で5回落とされたこともあるなぁ。

――1日で5回!

猿渡 チョークスリーパーだと呼吸ができなくて苦しいけど、頸動脈を絞められる分には数秒で眠るように落ちれます。ウチの担当編集者も何度落とされたかわからない(笑)。

――プロの凄味を身をもって体験したわけですね。でも、素人は絶対にマネしてはいけません。

猿渡 そうですね。プロの凄味といえば、いつだったか船木さんに、「プロレスラーになって嫌だったことは?」って聞いたら、「例えば首を痛めているときでも、相手はそこを狙ってくるし、避けても避けきれない技がある」っていう話を聞いてね。実は僕、この前足を骨折したんですけど、「その骨折してる足を蹴らせて」って誰かに言われたら、本気で抵抗しますよ(笑)。だけど、プロレスラーは負傷箇所を攻撃されることなんて当たり前ですよね。そのプロ意識は本当にすごいなと思います。その上、リングは四方から観られているから隠そうと思っても隠せない部分がたくさんあるし、その中で体を張っているのはすごい仕事ですよ。

――今、先生が描いている『ロックアップ』も、まさにプロレスラーの凄味を描いた作品ですよね。

猿渡『ロックアップ』の主人公・サムソン高木は極貧団体の社長レスラーで肉体は満身創痍、さらに癌を患って……というキャラクターなんですけど、実際のプロレスラーにもそれに近いことをやっている方はいると思うんですよ。サムソン高木は、人間が生きる社会の中での苦しみを全部引き受けている男。それでもプロレスをやっていきたいっていう「生き様」がある。それが描ければいいなと思ってるんです。

――先生が「生き様」を感じるプロレスラーは誰ですか?

猿渡 新日本にリターン参戦中の柴田勝頼です。彼は一度新日本を出ていって総合格闘技に挑戦しましたよね。最初は勢いで相手にガーッと突進するけど、寝かされると何もできない(笑)。戦績はボロボロだったけど、負けても記憶に残るプロレスラーらしいファイトをした。それって格闘家としてはナシだけど、プロレスラーとしてはアリなんですよ。

――確かに!

猿渡 昔、高田延彦がヒクソン•グレイシーと闘って負けましたけど(1997年10月11日、東京ドーム)、あの時も高田の「生き様」を感じたもんね。いくら負けて恥をかいたって、そういう闘いに出ていく度胸を俺らは観ているんだから!

――年を重ねるごとにプロレスの見方は変わっていくものなんですね。

猿渡 小学生の時の第1期、20代の第2期、50代になってからの第3期……それぞれ楽しみ方が違います。単純に一方の角度から観て楽しむだけじゃなくて、興行論だったり舞台裏の話も含めて楽しめるようになった感じかな。それだけプロレスって奥深いですよ。


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