2013.08.21

課題山積。山口香が語る「日本柔道界、腐敗の始まり」

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko

――女子選手に対するハラスメントがあって、それを彼女たちが告発した段階で代わっておくべきだったと思いますが、やはり彼女たちの勇気が、柔道連盟を今回の総辞職へと動かしたとも言えますね。

「アスリートの自立や責任というと、それこそ他競技ではヨーコ・ゼッターランドさん(女子バレー)とか、為末大さん(陸上競技)が発言を続けていますし、あとは、ドーピング疑惑を晴らした我那覇和樹さん(サッカー)の例もそうですけれども、ああいった方々はロールモデルだと思うんです。ただ、残念ながら、日本のスポーツ選手においては非常に少ない。理不尽なことをされても、泣き寝入りしたりする、そしてそれを周りもよしとする。権利を主張するということについて、日本は遅れていますね」
女子柔道選手へのパワハラ問題について発言を続けている山口香氏 photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT
――選手のエゴというふうに見られてしまう。

「はい。握りつぶされる前に選手自身が自己を主張するという習慣がないと思うんです。競技という部分では、努力精進しているにもかかわらず、日常での自己が無い。だから最後のところで、障害があったときに力を発揮できないで終わってしまう。そんな選手は、はたから見ていても非常に残念なものです。

 戦うというのは日常も含めてです。日本のスポーツ界でも個人が自立していかないといけません。今の若い選手は指導者予備軍です。指導者になって組織の中に入るということは選手の側に立って組織の上層部と戦うということなんです。でも選手の時代にそれができなかった人は指導者になってもできないです」

――パワハラの問題については、かなり前からお気づきになられていたのでしょうか。

「私自身、甘んじて受け入れている選手たちに『何をやっているんだ』という思いだったんです。ナショナルチームという日本のトップ、それも女子柔道という世界トップの選手たちが、殴られなきゃやらないとか、暴言を吐かれなきゃやらないという。いつからそこまで堕落したんだと。

 私が本当に問題にしたのは、暴力とか体罰っていうのをひと括りにするんじゃなくて、それは分けて、どの年代でどういう指導方法が必要なのか今後は精査していかなければいけないということです。

 代表はサッカーでもそうですけど、Jリーグや海外のクラブから借りてきている選手たちですよね。代表監督が育てたわけでもなんでもない。最後の仕上げをする場所です。そこにおいて、育成現場をないがしろにするような、また選手たちを軽んじて扱うような行為は絶対にあってはならない。そこが、私のいちばん問題にしたかったところです」