【ボクシング】間違いなくホンモノ。井上尚弥は辰吉を超える!? (3ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao
  • photo by AFLO

 今後に関して陣営は、記録にはこだわらないというものの、「でも、このままいけば自然と記録をつくってしまうんじゃないかな」(大橋会長)という勢いだ。井岡一翔(井岡ジム)が2年前に樹立したプロ7戦目の世界戴冠は、すでに射程内にあるといっていいだろう。その井岡への挑戦も、ファンの興味をそそるところだ。

 ただし、井上がクリアすべき課題を抱えていることも事実だ。その最たるものは、長丁場の経験であろう。すでに井上は、近い将来の世界戦を想定してパートナー3人×4ラウンドという12ラウンドのスパーリングをこなしているが、やはり実戦でのスタミナとなると、未知の面があることは否めない。佐野戦でも終盤に入ってややペースダウン、前半と比べてアゴが上がる場面はたびたび見られた。

 また当然のことながら、負傷時の対処経験も十分とはいえない。佐野戦では序盤で右拳を痛めたため、以後、ほぼ左だけで戦うなど対応力の高さを見せたものの、目の上の負傷や流血などは未体験だ。負傷は戦況を大きく左右するだけに、慌てずに対応できるのかどうか。

 そして、耐久力に関してもテストは済んでいない。これまではダメージを受けるようなクリーンヒットを許していないが、今後はそうもいかないはずだ。井上と同じライトフライ級には、このクラス最強と言われる34戦全勝(28KO)のWBAスーパー王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)がいる。世界にも、「モンスター」はいるのだ。今後はそんな相手の強打にも耐えうるアゴと肉体、そして精神力を培っていく必要がある。

 夏から秋にかけての4戦目で日本タイトルに挑戦。そして秋から冬に世界ランカー級と腕試しの試合を行ない、そのうえで世界挑戦というのが既定路線と考えられる。そして来年の今ごろは、どの団体のベルトを腰に巻いているのだろうか――。井上尚弥は、間違いなく「ホンモノ」である。

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