【ボクシング】西岡利晃「ドネア戦後、選択肢は『引退』しかなかった」 (3ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 作田祥一●撮影 photo by Sakuta Shoichi

――常々、西岡さんは「一片の悔いも残さず引退する」と発言されていました。その宣言は達成できましたか?

西岡 もし、マルケス戦で勝ったまま引退していたら、今のように「ボクシングをやりきった」という思いはなかったでしょう。自分がボクシングにかけた思いには、大満足しています。すべて出し切った。「あのとき、もうちょっとやっていれば」というのが、ひとつもないんですよ。だから、「後悔」ってないです。

――なるほど。

西岡 でも、最後の試合(ドネア戦)の結果は悔しい……。この悔しさを抱えて、次の世界に行くんです。思ったんですよね、死ぬまで勝負はついてないって。人生、どう転ぶか分からないし、引退後も人生は死ぬまで続く。だから、死ぬ間際なのか、棺桶に入ったタイミングなのか、「良かったな」って思えるときが、満足ってことなのかなって。

――ただ、ボクサー人生において、悔いはないと?

西岡 完全燃焼しました。

――たとえば2000年、西岡さんは帝拳ジムに移籍してから、さらに成長した面もあります。「もしも最初から帝拳ジムに所属していたら?」と思ったことはないですか?

西岡 ないですね。もし、最初から帝拳だったとしても、今以上の僕になったとは限らない。(最初に入門した)JM加古川ジム時代があったからこそ、今がある。そして、自分のボクシングをどうしたらいいのか分からなくなったときに、帝拳ジムに移籍できた。そういう意味で言えば、一番いい時期だったんじゃないかなと思います。

――人生は、そんな単純な足し算じゃないと。

西岡 人には、そのとき、立っている場所がある。だから、大事なのは『今』なんです。現役生活を終えた今、改めてそう思います。

後編へ続く>

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