【男子柔道】「お家芸」の復活にむけて。井上康生新監督が行なう改革とは?

  • 折山淑美●文・取材 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 さらに73kgでも、講道館杯では「自分の柔道をさせてもらえない事も意識して戦った」という心の準備を高く評価されていた20歳の大野将平(天理大学3年)が、ロンドン五輪銀メダルの中矢力(ALSOK)を一本勝ちで破って優勝した。井上監督は「中矢はケガもあってこれまでにみたことがないほどの悪い状態だったが、ある程度の力は見せてくれた。大野もここで勝って自信をつけただろうし、同学年のライバルで準決勝まで進んだ西山雄希(筑波大学3年)もいるから、3人で競り合えば面白くなる」と期待を寄せる。

 他にも90kg級のロンドン五輪銅メダリストで、10月の世界団体選手権にも出場した西山将士(新日鉄住金)の準優勝は評価したが、準決勝進出が1名だけで、なおかつ好成績を残せなかった81kg級と100kg超級は、「低いレベルでの横一線」と酷評した。特に100kg超級は「かつては日本のお家芸と言っていたが、今はもうそれも地に落ちた状態だ。超級は柔道の中でも別の競技という感覚を持って、練習方法から考え直さなければいけない」とまで言う。

 そんな状況の中で井上監督が重視するのはそれぞれの選手の課題を洗い出し、それを克服するための練習を課し、細かな対応をしていくことだ。そのためにコーチもこれまでより増やし、鈴木桂治や廣川充志、金丸雄介、古根川実など同世代の者を起用し、それぞれが1~2階級を担当するかつてのシステムに戻した。

「絶対にやらなければいけないのは、選手自身が己を知ること。それがなければ相手に勝つことはできないから、体力測定や技術面の洗い出しなどをやらなければいけない」

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