【ボクシング】西岡利晃、ラストダンス。敗者がリングに残したもの

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

 西岡がリングを降りた後、美帆さんに、伝えた言葉を聞いた。

「一生懸命がんばったね。カッコよかったよ」

 西岡もドネアも去ったリングを、名城が見つめていた。

「すべてを出し切れたか? それは本人しかわからない。ただ、出せたとしても、出せなかったとしても、確実に言えるのは、素晴らしい勝負を見せてもらったということ」

 徳山は言った。

「作戦もあるだろうけど、手を出さなければ始まらないのがボクシング。中盤、もう少し手が出せていれば……」

 ふたりの元世界王者は、そう語った。そして奇しくも、ともに似た言葉を続けた。

「これだけの試合が成立したことに感動を覚える。多くの人に夢を与えたと思います」(名城)

「これだけの舞台に立ったことが、多くのボクサーに、そしてこれからボクシングを志す人に、夢や勇気を与えたはず」(徳山)

『スピードキング』西岡利晃、カリフォルニアの夜に散る――。西岡はすべてを失い、ドネアはすべてを得た。

 ただ敗者であっても、ボクシングファンに、そして、その背中を追いかける日本人ボクサーたちに、与えたものは小さくはない。

【インタビュー】西岡利晃「ドネア戦後、選択肢は『引退』しかなかった」>>

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る