【ボクシング】ドネア戦を前に西岡利晃、誓いの言葉「家族のためならいつでも死ねる」 (3ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 大村克巳●撮影 photo by Ohmura Katsumi

 西岡は、挫折を知らず今の地位に辿り着いたわけではない。過去、WBC世界バンタム級王者のウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)に4度挑み、跳ね返された。また、2度のアキレス腱断裂も経験している。すべての逆境を乗り越えてきた西岡は、「大切なのは、『今』なんです」と胸を張る。

「ああだこうだ言っても、過去は変わらない。こうなりたいと思うだけでは、未来は変わらない。大切なのは、今。極論すれば、この瞬間、充実した今を積み重ねていくことだけが、未来を変えていく。未来を良くしていくためにできることは、今を頑張ることだけ。それでダメなら、やり方に問題があると考えるだけ。過去を振り返る暇はないし、未来に怯える必要もないから。大切なのは今だけ」
 
 西岡にとって究極の『今』が、幕を開けようとしている。試合終了のゴングが鳴ったとき西岡は、いったいどんなシーンを想像しているのか?

「大満足で4本のベルトを掛けています。もちろん、僕が。その姿が、くっきり見えています」

 結果こそが、何よりも優先されるべきだろう。しかし、できれば、試合開始前の西岡の姿にも注目してほしい。

「逆境や孤独と、ひとりで向き合ったわけじゃない。家族がいた。ひとりでは耐えられなかった。ひとりでは、チャンスすら掴めないまま終わっていた」

 そう家族への想いを語る西岡は、すべての試合のリングイン直前、ひたい近くで両拳を合わせ、必ずこうつぶやく。

「美帆(妻)、小姫(娘)のために命を掛けて戦う。家族のためならいつでも死ねる」

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