【ボクシング】48年ぶりの金メダリスト。村田諒太が興味を抱く対戦相手とは? (2ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao
  • photo by AFLO

 大目玉を食らうと覚悟していた村田は、二度と自分の拳を無為に振るうまいと決めた。

 東洋大学進学後も、全日本選手権優勝や世界選手権出場など輝かしい実績を残すが、最大の目標だった北京五輪出場は逃している。これを機に一度は引退。後輩の指導にあたったが、そんな折に元部員が不祥事を起こしたため、休部に追い込まれてしまう。戦線復帰を果たしたのは、沈み込む周囲を奮い立たせるためでもあった。

 出場を逃した北京五輪から4年――。村田の環境は大きく変化した。指導を受ける立場から教える立場に変わり、結婚と長男の誕生もあった。恩師・武元氏の死にも遭遇した。こうした悲喜こもごもが、村田をひとりの人間としてスケールアップさせたといったら、強引なこじつけになるだろうか。

 今大会、昨年の世界選手権で準優勝している村田は、優勝候補の一角に挙げられていた。しかし実のところ、欧米や旧ソ連諸国の並み居る強豪相手に決勝まで勝ち続けることは、至難とみられていた。

 そんななか、村田が紙一重の勝負をものにして優勝することができたのは、諸外国の強豪相手に、体力や馬力でひけを取らなかったからだけではないだろう。苦境でもあきらめずに食い下がる精神力の強さも、尋常ならざるものが感じられた。

「注目されていることも、期待されていることも知っています。でも、それがプレッシャーになることはありません。それで負けたのなら、自分に力がなかったということです」

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