【ボクシング】東京オリンピック以来、48年ぶりの「金」なるか?

  • 原 功●文 text by Hara Isao
  • photo by JMPA

準決勝に駒を進めた昨年の世界選手権・銀メダリストの村田諒太準決勝に駒を進めた昨年の世界選手権・銀メダリストの村田諒太 ロンドン五輪のボクシング競技で、バンタム級・清水聡(自衛隊体育学校)と、ミドル級・村田諒太(東洋大学職員)のメダル獲得が確定した。ボクシングは3位決定戦を行なわないため、ベスト4に進んだ選手全員がメダリストとなるからだ。1968年のメキシコ大会を最後に、五輪のメダルから遠ざかっていた日本アマチュアボクシング界において、これは実に11大会、44年ぶりの快挙達成となった。もちろん、一大会で2選手がメダル獲得するのは、史上初のことである。

 バンタム級の清水は、2回戦の『逆転判定(※)』による3回RSC(レフェリー・ストップ・コンテスト)勝ちで有名になったが、もともと地力のある選手だ。4年前の北京五輪に続いて2大会連続出場ということで、「雰囲気を分かっているのが強み。出るからには金メダルを狙う」と、自信を持ってロンドン入りした。56キロが上限のバンタム級では179センチと飛び抜けた長身で、相手にとっては戦いにくいサウスポーという特徴もある。10キロ近い減量が必要なため、これまで実力を発揮しきれないまま終わることもあったが、今回は調整が順調にいったのだろう。1回戦から3試合連続で最終3ラウンドでポイントを逆転するなど、勝負強いところを見せている。

 一方、ミドル級の村田は、2011年世界選手権の銀メダリストでもある。今回も優勝候補の一角と目(もく)され、他国の選手からマークされる存在だ。注目度や期待度が高く、プレッシャーもかかるなかでの大会だが、「銀メダルまでは取ったことがあるので、目指すは金」と、堂々の優勝宣言をして日本を発った。今大会はシードのため2回戦からの出場となり、初戦を21対12で突破して8強入り。8月6日の準々決勝では最終3ラウンドでポイントを挽回し、17対13で逆転勝利を収めている。ガードを固めて前進し、相手の隙を突いて重量感ある左右の強打を上下に打ち分ける、好戦的なタイプだ。

 ボクシングは長いこと、プロとアマの間に高い垣根があった。しかし、新体制になった昨年の春から、両者は急接近。今大会前には、代表4選手がプロの名門・帝拳ジムを訪れ、元世界王者や日本ランカーを相手にスパーリングを行なうなど、相互協力に努めた。ボクシング選手団の山根昌守団長も、「選手が伸び伸びとやれる環境をつくれた」と語る。

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