【ボクシング】井岡一翔vs八重樫東。史上初の統一戦を制するのは? (2ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao
  • photo by AFLO

 井岡はスピードとパンチの切れ、天性の閃(ひらめ)きと勝負勘を身につけた、万能型といえる。相手との呼吸を計りながら圧力をかけて自分の間合いをつくり、左ジャブから上下に鋭いパンチを打ち分けるスタイルを身上とする。世界王座を獲得した試合では無敗だった王者を左のボディブローで沈め、V2戦ではアッパー気味の左フック一発で挑戦者を屠(ほふ)っている。

 一方の八重樫も基本に沿った攻防パターンを持つが、打撃戦で強みを発揮するタイプといえる。その典型が、世界王座を獲得した昨年10月の試合だ。ポイントでリードを奪ったものの中盤には窮地に陥り、そこから再び盛り返して10回TKO勝ちを収めているのだ。井岡のような躍動美はないが、その分、戦いぶりからは挫折から這い上がった底力、執念が感じられる。個々の能力と総合的な戦力では井岡に一歩譲るものの、修羅場の経験数で勝る点が八重樫の強みだ。

 歩みも戦闘スタイルも異なる両者だが、チャンピオンの矜持(きょうじ)という点では、甲乙つけがたいものがある。4階級制覇を目標に掲げる井岡が「通過点」と言えば、八重樫は「主役の座をいただく」と意気込む。年齢は6歳差だが、この世界における先輩・後輩は関係ない。ともにリング上で相手を叩きのめすことで敬意を示すつもりだ。

 下馬評は2-1の割合で井岡有利といったところか。スピードと駆け引き、パンチの切れで勝る井岡が序盤から主導権を握るようだと、八重樫は苦しい状況に追い込まれる。焦って出るところにカウンターを合わされる危険性も高まるだろう。

 八重樫が勝機を広げるには、早い段階でペースを掌握する必要がありそうだ。前半で流れをつかみ、苦戦の経験が皆無の井岡にプレッシャーをかける展開に持ち込めば面白い。

 試合は序盤の主導権争いを経て、中盤には激しいパンチの交換が見られそうだ。105ポンド(約47.6キロ)の最軽量級だが、KO決着必至の白熱戦が期待できる。抜け出すのは井岡か、それとも八重樫か。

 また、かつて対決が熱望されながら実現しなかったライバル――井岡弘樹会長と大橋秀行会長の代理対決という視点から見ても楽しめるカードといえる。20年超の年月を経て対角コーナーに陣取ることになった両師匠の指示にも注目したい。

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