2012.05.13

【柔道】「真面目」の海老沼と「粘り」の中矢。
ロンドン五輪のカギを握るふたりの中量級王者

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

73kg級を制したのは昨年の世界選手権王者、中矢力 もうひとつ、こちらも「世界王者対決」と期待されていた73㎏級は、2010年東京大会の王者、秋本啓之(了徳寺学園職員)の1回戦敗退で、その実現がアッサリ消えてしまった。

 もうひとりの世界王者(2011年優勝)である中矢力(ALSOK)は、1回戦で肘を痛め、勝ち上がったものの準決勝ではその痛みが肩まできて、腕が上がらなくなるほど。しかしここから、中矢は持ち前の粘り強さを発揮した。ゴールデンスコアの延長戦で1分01秒に繰り出した"支え釣込み足"の技ありで逃げきったのだ。

 痛み止めを打って臨んだ決勝は、大野将平(天理大)の勢いのある動きに苦しみながらも「得意にしている背負い投げに入ってみて(ケガの影響で)ダメだと思ったので、寝技で決めよう」と判断すると、巴投げで相手を崩し、2分35秒には思惑通りに"崩れ上四方固め"で捕らえ、3分ちょうどに一本勝ち。五輪を確実にした。

「ケガをしたのは自分の責任だが、その中でもしっかり勝ち上がっていける力をつけなければいけない」

 こう言う中矢は、昨年の世界選手権でも、4回戦で膝を痛めながらも勝ち上がって優勝。このときはケガをした後に動きが悪くなったが、それでもゴールデンスコアの延長戦に持ち込んで勝利していく粘りの柔道を見せた。

「アクシデントが起きても乗り越えられる才能は、世界で勝つためには必要条件のひとつ」とALSOK柔道部の小橋秀則監督はこの粘りを評価する。中矢は今回の大会でも、そのメンタルの強さを見せたのだ。

 海老沼が優勝した男子66㎏級は、内柴正人がアテネ、北京と連覇した階級であり、ロンドンでも金メダルが期待されている。また73kg級の中矢は、苦戦続きの日本男子にあって、世界ランキング上位をキープしており、最も金に近い存在だ。

 重量級の不振でいまひとつ元気がない日本男子柔道。五輪では、前半に開催されるこの階級の結果が良ければ、そのあとの重量級にも勢いがつくはず。日本男子柔道のロンドン五輪の成績のカギは、海老沼と中矢のふたりが握っているといっていいだろう。

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