【柔道】「真面目」の海老沼と「粘り」の中矢。
ロンドン五輪のカギを握るふたりの中量級王者

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

全日本体重別選手権66kg級で優勝した海老沼匡(左)全日本体重別選手権66kg級で優勝した海老沼匡(左)
 5月12日の全日本体重別選手権初日、男子の66kg級と73kg級は2010年と2011年の世界選手権王者が、ロンドン五輪代表の座を争った。

 初戦から好調ぶりを見せたのは2010年世界選手権の66kg級王者の森下純平(筑波大)。1回戦は1分22秒に"釣り込み腰"で一本勝ち。準決勝も開始2分で福岡政章(ALSOK)を"払い腰"で退けて決勝へ進んだ。

 一方、昨年の世界選手権王者である、海老沼匡(パーク24)は、1回戦の開始2分22秒に"内股"で一本勝ちしたが、調子はいまひとつ。準決勝でも相手の守りをなかなか崩せず、残り18秒で"大外刈り"の有効などでの優勢勝ちと、波に乗れないままだった。

 ともに「勝った方が代表になれる」と意気込んで臨んだ決勝は、海老沼が先に攻める展開となり、開始2分51秒に森下が指導を受ける。だが、消極的になった海老沼も3分39秒に指導をもらい、一進一退。そこから海老沢が再び攻め、4分05秒に担ぎ技にいくと見せて繰り出した"支え釣込み足"が見事に決まり、一本勝ちで勝負が決した。

 それでも海老沼は「勝ったけど内容が全然ダメだったから」と笑顔を見せない。

「森下君とはこれまで2回試合をしていたから、どう仕掛けてくるかわかっていて、対策もしていた。それでも、課題にしていた組み手も相手に力負けしていたし、最後の技も、『大技を狙いにいきすぎだから、フェイントになる支え釣込み足も使え』と監督に言われて練習していたのがやっとかかっただけ。練習は積んだが、試合を想定した練習ができていなかった」と反省しきりだった。

 指導する吉田秀彦監督は「思い切って技をかけられる選手。しっかり組めなくても技が出るようになればもっと強くなる」と海老沼を高く評価しており、性格については「本当に真面目。もっとふざける時があってもいいのに」と笑って言う。

 そんな海老沼のコメントは、五輪を確実にしたとはいえ、監督に言われてしまうように真面目そのもの。

「まだ課題だらけ。相手にいいところを持たせなければ投げられることもないので、もっと根を詰めて練習をしていきたい」と、笑顔すら見せなかった。

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