【プロレス】金沢克彦×ユリオカ超特Q「90年代黄金期を語ろう!」

  • 高松えみ子●取材・文 text by Emiko Takamatsu
  • 本田雄士●写真 photo by Honda Takeshi

『燃えろ!新日本プロレス』大好評刊行記念スペシャル対談Part.2

知名度は落ちても、観客動員は増えた90年代

――『燃えろ!新日本プロレス』は7号でグレート・ムタ特集をやりましたが、90年代の試合を取り上げた号も大きな反響をいただいているんですよ。

金沢 観客動員に関して言えば、平成時代はドーム興行を連発していたので増えているんですよ。よくプロレスは力道山やBI砲の時代に比べて世間での認知度がどんどん落ちていったと言われますけど、その時代は日本武道館では器が大きすぎて興行ができなかったそうです。だから、テレビ中継がゴールデンタイムから外れて視聴者の数は減ったとしても、延べの観客数は昔より確実に増えているんですよね。知名度と集客力は違うということなのかな。

ユリオカ 80年代はテレビで観ている「プロレス好き」は多かったと思うんですけど、90年代はお金を払って観る「ファン」をしっかり作った時代じゃないかなと思うんですよね。新日本プロレスが89年に初めて東京ドームに進出した時、僕はあの棚橋弘至やレーザーラモンRGを輩出した京都の立命館大学プロレス同好会に在籍していたんですけど、仲間たちと一緒に"密航"しましたからね。

金沢 その後、猪木さんが参議院議員になったことで、90年代というのは必然的に変革を求められた時代でしたよね。それが橋本真也、武藤敬司、蝶野正洋の闘魂三銃士のような新しいスターだったり、長州力が現場責任者になったことでドーム興行や他団体との対抗戦、G1クライマックスといった新しい仕掛けがどんどん出てきて、見事に成功したんです。

――90年代は「ドームの時代」でもありましたが、印象に残っている試合はどれですか?

ユリオカ それはもう96年4月29日、東京ドームでの藤波辰爾vs天龍源一郎ですよ! メインが高田延彦vs橋本真也(29号収録予定)の時です。僕は今日の資料としていただいた収録予定のラインナップに、この試合が入っていなくて非常に憤っているんですが(笑)。

金沢 藤波さんの鼻骨が折れた試合ですね。試合後、天龍さんがバックステージで藤波さんの奥さんに挨拶したら、シカトされたそうですよ(笑)。

ユリオカ 伽織(かおり)夫人も怒ってましたか(笑)。あの時は、あまり出さなくなっていたドラゴン・ロケットをやったら客席がチョー沸いて、もう1回やったら信じられないぐらい盛り上がって、さらにもう1回やったら天龍さんにグーパンチで迎撃されて。凄まじく鼻血が出てましたからね。でも、試合後に天龍さんが少し素に戻った感じで心配そうに握手を求めたら、藤波さんは「そんな情けはいらん!」とばかりに張り手で拒絶して。僕が思うに、藤波さんは流血が凄く似合う選手なんですよ。

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