小籔千豊、息子とのゲームは教育の一環。ネットの世界でも礼儀を教える (2ページ目)

  • 都合亮太●取材・文 text by Togo Ryota
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 子供の頃からゲームに触れていた世代がいつしか親となり、今となっては親子でゲームを楽しむ家庭も増えてきた。さらに、ゲームの攻略情報はオンライン上に数多く掲載されており、子供がゲーミングスキルを磨くための環境は整ってきている。親の知らぬ間に子供がゲームのエキスパートになっていても何ら不思議ではない。

「釣りやキャンプは、親が子に与える趣味だと思います。でもゲームは子供が親に与える趣味だと感じていて、他の趣味とは少しニュアンスが違うんです」と小籔は語る。勉強でもスポーツでも親が教える側になる場合がほとんどだが、ゲームの世界では立場が逆になることも多い。子が教え、親が学ぶ。そして親が十分に学べば、対等な関係の「フレンド」となる。

 かつて小籔が父親とゲームの世界を共有していたように、息子と同じゲームで遊ぶことには特別な意味がある。

「ゲームでアップデートがあると『あの変更はどう思う?』『この仕様は厳しいな』などと、息子と一緒に意見を言い合うんです。同じ目線で意見を交えるなんて、なかなかないですよね。親と子の関係性が広がっている感じがします」

 だが、フレンドのような関係でも親として振る舞わなくてはならない場面もある。ある日のこと、小籔の息子がオンライン対戦をしていて、荒々しい言葉づかいをしていたそうだ。言葉の矛先は対戦している「ネットの向こうの誰か」だった。小籔は息子に対して「そういう口調で大丈夫なんか?」と聞いてみた。すると「みんな、こんな感じだから大丈夫」と軽い口調で答えた。

 一昔前はオンライン対戦が気軽にできず、子供たちは誰かの家に集まってゲームをしていた。同級生たちが顔を突き合わせ、少し離れた場所には親がいる。友達に軽口を叩くことはあっても、節度はわきまえる。度を超えた言い合いや喧嘩に発展しても、見かねた親が叱る。そういったコミュニケーションが自然と成り立っていた。だがオンラインゲームは違う。相手の顔は見えず、友達以外とも接する機会がある。子供が向き合うのはディスプレイ越しの広大なネットの荒野――そして、親や大人が一緒にいるとは限らない。

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