朝青龍と白鵬が乾杯。断髪式で改めて感じた旭天鵬の「偉大さ」

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 昨年7月の大相撲名古屋場所(7月場所)を終えて、およそ23年間の力士生活に終止符を打った元関脇の旭天鵬。2012年夏場所(5月場所)、37歳のときに史上最年長記録で幕内初優勝を遂げ、40歳になっても幕内力士を務めてきた。まさしく「角界のレジェンド」と呼ばれるにふさわしい活躍を見せ、41歳の誕生日を前にして現役を退いた。

 それから10カ月――旭天鵬は、力士の象徴となる髷(まげ)と別れを告げる日を迎えた。

 5月29日、両国国技館の前には、午前11時の開場を待ちきれないファンが列をなしていた。そんな、本場所とはまた違った熱気が漂う中、『旭天鵬引退、大島襲名披露大相撲』が行なわれた。

 一般的に「引退相撲」と呼ばれるこうしたイベントは、引退した力士の誰もができる催しではない。原則的には、何十場所か関取を務めた力士でなければいけないし、充実した内容にするには、他の力士たちからの信頼を得ていなければならない。とりわけ、後者は重要なことである。

 というのも、現役時代にお世話になった後援者を多数招いて、そうした方々に土俵上で直接髷に鋏(はさみ)を入れてもらう他、本場所と同じように横綱の土俵入り、十両、幕内力士による取組などが行なわれる。さらに、地方巡業で見られるような、綱締めの実演、力士が歌う相撲甚句など、こうした盛りだくさんのプログラムを、引退した本人がすべて取り仕切らなければならないからだ。

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