【世界陸上】福士の銅メダル、
木崎の入賞に影響を与えた野口みずきの存在

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純/アフロスポーツ●写真 photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

福士加代子(右)は銅メダルを獲得し、木崎良子(左)は4位入賞を果たした。福士加代子(右)は銅メダルを獲得し、木崎良子(左)は4位入賞を果たした。 野口みずきの世界の舞台での復帰レースはゴールを切ることなく終わった。

8月10日モスクワで開幕した世界陸上、初日の女子マラソン。スタート直後から飛び出したベレリア・ストラネオ(イタリア)を追走する集団の一番前めに位置取りをしたときも、一気にペースを上げたアフリカ勢に追いついたときも、野口みずきは元気な走りをしていた。

 だが異変は8km過ぎに起きた。集団を避けるように右側をひとりで走っていた野口は徐々に遅れ始めたのだ。

 それでも10km通過は先頭から5秒差と粘っていた。しかし13km手前で後ろからきたドナ・キプラガト(ケニア)や木崎良子に一気に抜かれると、そこからはジリジリと差をつけられ始めた。その差は15kmを過ぎると一気に広がった。それまでの貯金を生かして10位をキープして走り、25kmでは9位に上げたものの、30km手前で一度止まってからは歩いたり走ったりという状態になってしまった。結局、33km地点で棄権を余儀なくされ、医務室に運ばれた野口みずきは軽い熱中症と診断されたのだった。

「走る時は、『何人たりとも私の前を走らせない』という気持ちで走ります」と常々口にしていた野口。序盤の走りはまさにその通りの走りだったといえる。それは自分の調子に自信を持っている証拠でもあった。

「本人はすごく好調で、いい練習も積めていたと話していたんです。だけど、調子が良すぎてちょっと疲労が残ってしまったというのもあるんじゃないかと思います。それで暑さにやられてしまった。走っている途中でどこかが痛くなったわけでもないようだから、原因は疲労だと思います」と、日本陸連の武富豊女子・長距離マラソン部長は話す。

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