「現役大学生Vリーガー」大塚達宣が窮地のパナソニックを救った。ファイナル3進出の救世主を敵将も「チームの中心になれる」と称賛 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • 火野千鶴●撮影 photo by Hino Chizuru

敵将から「これからが楽しみ」

 大塚はジュニアパンサーズでプレーしたあと、京都の名門・洛南高校に進学し、2019年の春高バレーで優勝してMVPに輝いている。早稲田大でもインカレ連覇に貢献し、東京五輪を経てVリーグに参戦した。ある試合後の会見では、「練習でも試合でも本当にたくさんのことを経験できて、学ぶことがいっぱいなので毎試合が楽しいです」と目を輝かせていた。

 その言葉どおり、大塚は試合を経験するごとに成長している。当初はサーブレシーブも、リベロの永野健が大塚の体の前にきたボールまでカバーしていたが、今では各チームのビッグサーバーに狙われても食らいついている。そして、どんなに劣勢でも楽しそうに笑い、それがチームの雰囲気を盛り上げている。

 大塚の加入前、パナソニックは8勝6敗でプレーオフ圏内の3位以上に入ることはかなり厳しい状況だった。大塚がスタメンで起用されるようになってからも痛い敗戦があったが、3月6日の東レ戦で息を吹き返す。翌週には、昨シーズン覇者のサントリーサンバーズに連勝して望みをつないだ。

 その2戦目を終えたあと、サントリーの山村宏太監督は大塚への賛辞を惜しまなかった。

「本当に彼にやられたな、というのが第一印象。ディフェンス、ブロック、アタックなど、すべての面でこれからが楽しみで、敵チームからすると『嫌だな』というのが率直な感想です。彼の若さは弱点だと思っていたんですが、チームの中心になれる選手ですね。

 今日もクビアク選手よりも本数を打っているし、決定率も高い。それを下げたくて、ムセルスキー選手を前に置きましたが、大塚選手の数字を落とすことができませんでした。特にブロックがついた状態での攻撃は"引き出し"が多いですね。ブロックに当てて飛ばす、リバウンドを取る、選手がいないところに落とすこともできる。そういうプレーに長けたクビアク選手がチームメイトにいますから、いろんな学びがあったのかな」

 パナソニックにはクビアク、清水という力のあるベテランがいるが、さすがに全盛期と比べると力が落ちてきている。そこにフレッシュな大塚が入って、セッターの深津英臣もバランスよくトスを散らせるようになった。それがパナソニックのファイナル3進出につながった。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る