突然の現役引退を発表したビーチバレーの坂口佳穂。「目標への『熱量』が失われてしまった」 (2ページ目)

  • 小崎仁久●取材・構成 text by Kosaki Yoshihisa
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 チームをイチから築き上げるとなると、覚悟も"熱量"も必要です。個人的には、自分の能力や技術だけではなく、"チーム力"がないと世界では勝っていけないと考えていますから、自らの"熱量"が欠けていてはパートナーにも失礼ですし、これから(誰と組んでも)戦っていくのは難しいと思いました。

 アスリートとして、そんな精神状態で続けていくことはできませんし、みなさんに『私を応援してください』とも言えなくなってしまうので、引退を決断しました」

――引退という決断を下すまでに、ご家族や周りの方に相談したりしたのでしょうか。

「これまで家族には何でも相談してきましたが、今回のことについては自分だけで悩んで、自分で決断して、自ら出した結論を報告しました。最後は自分のなかで迷いはなかったですから。周囲にも一切相談していません。身近な人は感づいていたかもしれませんが......。

 これまで応援してくれていた家族のみんなからは、『佳穂の人生だし、今まで楽しませてくれてありがとう』と言われて、自分が決めたことを尊重してくれました。(スポーツ少年団でバレーボールのコーチだった)父親も『セカンドキャリアも頑張りなさい』と言ってくれました。本心はわかりませんけど......」

――以前、なかなか勝てなかった時期にも「やめようと考えたこともあった」とうかがったことがあります。その時と今回とは違いましたか。

「全然違いましたね。以前そう思った時は、自分のなかで『私はもっとできる』と思っていましたから。今回はそう思うこともできませんでした。ビーチバレーは楽しいのですが、結果を求めると、楽しむだけではダメ。やらなければいけないことがたくさんあります。今回は、そこへの気持ちがついていけなくなっていました」

――さて、2014年からビーチバレーボールを始めて7年。改めて競技生活を振り返っていただきたいのですが、印象に残っている試合、大会などはありますか。

「振り返ってみると、不思議なことに楽しい思い出しかよみがえってきません。やっぱり試合に勝ったことは、心に強く刻まれていますね。

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