坂口佳穂、東京五輪出場はならず。それでも「貴重な体験ができた」

  • 小崎仁久●文 text&photo by Kosaki Yoshihisa

 第2セットも、状況は変わらなかった。石井&村上めぐみペアが本来の形を取り戻し、攻守のギアがまた一段上がると、坂口&村上礼ペアはミスを連発。坂口のスパイク、ブロックも単発では決まるが、流れを一変させることはできなかった。そのまま第2セットも12-21で失って セットカウント0−2で敗退した。

 坂口佳穂と村上礼華の、初めてのオリンピックへの挑戦は終わった。1セットも取れず2戦2敗と、チームのいいところを出し切ることはできなかった。

 それでも、得たものは少なくない。「思い切ってできたのはよかったが、悔しい......」と村上礼が涙を流す横で、坂口は「次につながる試合はできた。競技生活の中で貴重な経験ができたと思う」と気丈に話した。

 痺れるような緊張感のなかで行なわれるゲーム体験は、そうそう経験できるものではない。4年に一度の大きな目標に対しても、改めてその"重さ"を実感したことだろう。

 最終的に石井&村上めぐみペアがトーナメントを勝ち上がって、東京五輪への切符を手にした。石井&村上めぐみペアは5年前、リオデジャネイロ五輪のアジア大陸予選に出場。準決勝で敗れ、涙を呑んだ。だが、その時の経験、悔しさをバネにして「ここまでやって来た」という。まさに苦難の過程を経て、ついに大いなる夢をつかんだ。

 坂口佳穂と村上礼華は、今大会の出場チームの中ではランキング最下位。しかも、最年少ペアである。未来あるチームであり、2024年パリ五輪、2028年ロサンゼルス五輪と、夢舞台への挑戦もこれからが本番だ。

「まだまだ目指す目標はたくさんある。それに向けてがんばっていきたい」

 坂口はそう言って、最後は笑顔を浮かべた。今回の貴重な体験を経て、近い将来、逞しく成長した彼女たちの姿が見られることを期待したい。

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