ロンドン五輪直前、竹下佳江にまさかの事態。メダル獲得へ激痛を仲間にも隠し続けた (4ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari

 準決勝はブラジルに敗れ、メダルをかけて韓国との3位決定戦に臨んだ。エースの木村沙織がマークされていたため、竹下は"韓国キラー"の迫田さおりにトスを集めた。日本は2セットを先取し、第3セットもマッチポイントを握る。相手のサーブを木村がレシーブし、やや崩れたボールを竹下が懸命に追いかけ、後方の迫田にトスアップ。迫田がブロックアウトをとって、28年ぶりのメダル獲得が決まった。

銅メダル獲得後、記念写真を撮る日本代表メンバー photo by Ishijima Michi銅メダル獲得後、記念写真を撮る日本代表メンバー photo by Ishijima Michi 選手たちは飛び上がって喜びを爆発させ、控えのメンバーやスタッフたちもコートになだれ込んだ。竹下は、長く日本代表で共に戦ってきたリベロの佐野優子と、泣きながら抱き合った。

「どの時代も、監督や先輩たちなどから、いろんなことを学びました。長く日本代表でプレーしましたが、ロンドン五輪メンバーはその中でもバランスがよかったチームだったように感じます。私や(木村)沙織などキャリアを重ねた選手と、初出場の選手がうまくミックスされていました」

 五輪出場を逃し、引退さえ決意した2000年の最終予選から12年。「五輪出場を逃した屈辱は、五輪に出ることでしか晴らせない」という思いを、頼もしいメンバーと共に実現させた。

 ロンドン五輪後、竹下は休養を経て、2013年7月に現役引退を発表した。メディアに大きく取り上げられたのは、それから約3年後。眞鍋が立ち上げたプロクラブチーム、ヴィクトリーナ姫路の監督に就任した。

「私は長男を産んですぐだったので、関係者の方からは『いい返事は聞けないかもしれないけど、前向きに考えてほしい』と話をもらいました。そのとおりに『無理です』と断っていたんですが(笑)、最後はバレー界への恩返しというか......そうやってプロチームができていくことは日本女子バレー界にとっても必要ということも考えて決断しました」

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