石川真佑と黒後愛。女子バレーの若きエースが攻守両面で見せる進化 (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by Sakamoto Kiyoshi

 黒後は昨季、レフトアタッカーからセッター対角(ライトアタッカー)に回った。それでも「もともと私は、ライトのほうが好きなんです」と、あっけらかんと語る黒後だが、レフトとライト、どちらから打つのがメインになるかは、今後の選手人生を左右する。

 代表でも、守備の要だった新鍋理沙が引退して以降、ライトを誰が務めるのかは不透明。サウスポーの長岡望悠(久光スプリングス)の名も挙がるが、左ひざに負った大ケガから完全復帰したとは言いがたい。

 そのライト候補のひとりである黒後は、もともとパワーのある選手だが、今季は攻撃に速さが加わった。総得点ではクランや石川に後れを取っているものの、課題でもある守備面、快進撃を続けるチームを牽引するメンタル面の成長も感じられる。

 チームとしての目下の目標は、もちろん皇后杯決勝で待つJTマーヴェラスに勝っての日本一。準決勝を勝利したあと、石川が「もちろん優勝は目標ですが、それを意識しすぎず、自分たちのプレーをしっかり、思い切りやりたい」と意気込みを語れば、主将の黒後も次のように気を引き締めた。

「今季はリーグ戦でも一度対戦して、その時は勝っていますが、だからこそJTさんには『次は勝ちたい』という気持ちがあるはず。それ以上の気持ちを、自分たちがコートの中で表現しなければいけません」

 さらにその先にはリーグ優勝も見えてくる。2シーズン前にはファイナルまで進んだものの、久光の精度の高いバレーに屈した。しかし今季は、若きエース2人と共に進化を見せる東レが、2011-12シーズン以来の栄光を手にするまで突っ走るかもしれない。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る