新鍋理沙が明かすメダル獲得の裏側。ロンドン五輪の激闘を振り返る (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

チーム最年少の22歳ながら、日本の28年ぶりの快挙に貢献。左は狩野舞子  Photo by Michi Ishijimaチーム最年少の22歳ながら、日本の28年ぶりの快挙に貢献。左は狩野舞子  Photo by Michi Ishijima 日本のファンが手に汗を握った、中国戦の2日後に行なわれた準決勝。勝てばメダル獲得が決まる前回覇者・ブラジルとの対戦は、新鍋も「ケチョンケチョンにやられたイメージしかない」と苦笑する一方的な展開で、セットカウント0-3で敗れた。

 日本は3位決定戦に回ることになり、銅メダルを争う相手はアジアのライバル・韓国に決まった。

「『あと1試合で終わっちゃうんだな』という寂しい気持ちもありましたが、もちろん勝つ気でいました。とにかく思い切り、自分ができることを精いっぱいやろうと思っていました」

 その言葉どおりに新鍋は躍動した。守備だけでなく、エースの木村や迫田さおりと共にスパイクで得点を重ねていった。普段はおとなしい新鍋が、雄叫びをあげながらスパイクを打つ姿に、その試合を見ていた筆者も身震いがした。

 新鍋によると、韓国戦の日本チームの作戦は「名づけるなら、『キム・ヒジンをイライラさせる作戦』」だったという。キム・ヒジンはアジア最終予選の日本戦で、韓国の対日本22連敗を止める立役者にもなった選手。そのキム・ヒジンをサーブなどで狙ってイラつかせ、それを主砲のキム・ヨンギョンに伝染させていこうという狙いだ。

 その作戦がうまくハマったこともあり、第2セットこそデュースになったものの、結果はストレート勝ちした。

「最後の得点が決まった時の気持ちは、言葉ではうまく言い表せないというか、今までにない感情でした。『うれしい』だとちょっと軽い気もするし......。とにかく、ホッとしたことは覚えています。『オリンピックでメダルを取ったんだ!』と実感したのは、表彰台で銅メダルをかけてもらった時ですかね」

 大会後、銀座で行なわれたメダリスト凱旋パレードには沿道に多くの人々が詰めかけ、オープンバスの上からその光景を見た新鍋は、あらためて「オリンピックでメダルを取ること」のすごさを体感した。日の丸をつけて戦うことの喜びを体中で受け止めた夏だった。

(第5回につづく)

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