新鍋理沙が大粒の涙。初ワールドカップで「私のせいで負けたのかも」 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

 ワールドカップ後のリーグでは、「レシーブ賞」を受賞するなど、準優勝した久光スプリングスの主力として活躍。2012年5月に行なわれたオリンピック最終予選のメンバーにも選ばれた。

 8チームでの最後の出場権争いも熾烈を極め、日本の運命は最終戦のセルビア戦に委ねられた。勝敗に関わらず、2セットを取った時点で五輪出場が決定。試合はセットカウント1-1となり、日本が第3セットのセットポイントを握ると、最後は新鍋がスパイクを打ち抜いた。

 大きなプレッシャーがかかる一打だったろうと思いきや、「決めたあとは、『え、今ので(出場権が)取れたの?』と思いました」と照れ臭そうに笑った。

「記憶があいまいなんですが、2セットを取ったらオリンピックへの出場が決まるのを知らなかったのか、忘れていたのか......。でも、第3セットを取った時の会場の盛り上がりがいつもよりすごくて。旗のようなものを振っている方も多かったですし、それで『出場が決まったんだ』と気づいた感じです(笑)」

 普段はほんわかとした性格で"天然"な一面もある新鍋らしいエピソードとも言えるが、目の前の勝負に対するこだわりの強さの表れでもあった。

「それまでもセルビア戦は苦しい展開になることが多く、私にも苦手意識があったので、試合前は『どうやったらうまくいくのかな』ということで頭の中はいっぱいでした。出場権が取れたことは安心しましたけど、結局はその日の試合も負けてしまいましたし。それに、最終予選のメンバーがそのままオリンピックに出場できるわけではないので、試合後も『まだ気が抜けないな』と思っていましたね」

 実際に、新鍋はロンドン五輪メンバーの12人に残ったが、親友でもある岩坂は無念の落選となった。さまざまな思いを背負って海を渡った代表選手たちは、大きな歓喜を日本に届けることになる。

(第4回につづく)

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