2020.10.28

新鍋理沙が大粒の涙。初ワールドカップで
「私のせいで負けたのかも」

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

初めてのワールドカップでも活躍 photo by Sakamoto Kiyoshi初めてのワールドカップでも活躍 photo by Sakamoto Kiyoshi  1勝1敗で迎えたアジア女王・中国戦では、新鍋の"負けず嫌い"を象徴する場面もあった。セットカウント2-2で迎えた第5セット、一時は8-4とリードするも、中国の強力なブロックなどで徐々に追いつめられて逆転負け。試合後、新鍋は悔しさを抑えきれずに大粒の涙を流した。

「中国戦で泣いてしまったのは......『私のせいで負けたのかも』と思ったからです。日本は前年の世界選手権で銅メダルを取っていますし、私が足を引っ張ってはいけないと思っていました。でも、この試合では周りに助けてもらってばかりで、自分は何ができたのか思い出せないくらい。勝ちきれなくて、『悔しい、不甲斐ない』という気持ちしかありませんでした」

 それでも気持ちを切り替えて出場を続け、迎えた10戦目のドイツ戦。新鍋は途中出場ながらチーム3位の16得点を挙げるなど、フルセットでの勝利に大きく貢献した。負ければこの大会での五輪出場権獲得がなくなる一戦だったが、「その時は『今さら緊張してもダメだ』と、何も考えずに試合に入りました」と振り返るように、無心で崖っぷちのチームを救った。

 日本は続く最終戦でアメリカにも勝利して3位中国と8勝で並んだが、1試合ごとに獲得したセット数によって変動する「勝ち点」の差で4位となり、あと一歩で五輪への出場権を逃した。3大大会デビューでいきなり激戦続きだったワールドカップは、新鍋にとってどんな大会だったのか。

「緊張と、『大丈夫かな』という不安が入り混じった大会でした。でも、終わってもホッとはしませんでしたね。Vリーグの開幕が迫っていましたし、何よりオリンピックの出場権が取れなかったので、すごく悔しさが残りました」

 熱戦の様子がテレビで放映されたことで、ファンの盛り上がりはすさまじく、最年少で活躍した「リサ・ナナ」の人気も急上昇した。しかし新鍋は、「当時はそれを気にする余裕がありませんでした。とにかく必死だったので、会場で応援してくれたファンの多さや、自分の人気ということまでは考えられなかったです」と振り返る。