2020.07.14

王者との決戦で「自分に腹が立った」西田有志。悲願達成後の涙の理由

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 火野千鶴●撮影 photo by Hino Chizuru

 最終第5セットは序盤からジェイテクトが走り、途中1点差まで詰め寄られたものの、セッターの中根聡太が攻撃陣を使いこなして追撃を許さなかった。西田も2連続でスパイクを決めるなど突き放し、最後は伏見のサービスエースで終止符が打たれた。

チーム初の優勝を果たしたジェイテクトSTINGSのメンバー チーム創設以来、ずっと手が届かなかった優勝。その悲願達成に大きく貢献した西田は、レギュラーラウンド終了時に確定していた「総得点」と「サーブ効果率」のタイトルに加え、MVPも獲得した。

 決勝が終わった後の整列で、西田は珍しく人目をはばからずに大粒の涙を流した。試合後の会見でその涙の理由を問われると、その時の心情を次のように話した。

「僕が"日本一"になれたのは、これまでの人生で初めて。素直にうれしいです。また、『このチームで勝ちたい。勝たなきゃいけない』と思っていたので、勝った瞬間にホッとして、涙が出たのかもしれません」

 さらに、取材陣から家族へのメッセージを問われると、「いつも、会場まで試合に来てくれた。特に父の声は響いてくるのでわかるんですけど、それ以外でもいろんなメッセージをしてくれたりしたので、『支えてくれてありがとう』と言いたいです」と、少しはにかみながら答えた。

 両親に連れられて、生後5カ月から体育館にいた西田。姉や兄の後を追うようにバレーボールを始め、強者に勝つために努力を重ねて成長してきた。時には挫折も経験しながら、それに屈することなく力に変え、20歳にして日本一に上り詰めた。

 もちろん挑戦が終わったわけではない。来夏に予定されている東京五輪、さらにその先へ――。がむしゃらに、しかし着実に進化を遂げてきた西田は、さらなる"頂点の景色"を目指して翔び続ける。

(第12回につづく)

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