「変人」宮下遥がトス回しで成長。全日本の正セッターを再奪取なるか (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 黒羽白●撮影 Kurobane Shiro

 河本監督が「宮下の一番いいところ」として挙げたのは、試合中の指示をすぐに反映できる適応力と修正力。さらに今季は、トス回しにも成長が見られたという。これまでの宮下は、トスが左右のサイドに偏る傾向があったが、昨年の代表での活動によってそれに変化があった。

「うちはバックアタックを使わないチームだったんですけど、遥はディグ(アタックレシーブ)からのバックアタックも使うようになった。代表も今季からバックアタックを多用するようになったので、その経験を生かそうとしたのでしょう。まだ、焦った時や疲れた時に、筋力のなさが見えてしまうことはあります。食が細いんですけど、夏までにもっと食べて筋力をつけないとね。そういう課題はありますが、成長が見えたシーズンだったと思います」(河本監督)

「夏までに」という言葉は、東京五輪を見据えてのこと。その開催が決まった7年前、宮下は「私はセッターとして一番いい年齢になっていると思うので、(東京に決まって)うれしいです」と話していた。しかし、15歳から岡山の司令塔を務める責任感から、次第にVリーグにかける思いが強くなり、「岡山を日本一にすることのほうが大事」と口にすることが多くなった。

 しかし今季は、その日本一には届かなかったものの、シーズンを通して手応えと自信を掴んだのだろう。ファイナルの試合後には「五輪に向けて、気持ちを切り替えて頑張らなきゃと思います」と力強く意気込みを語った。

 もともと評価が高かったサーブ、ディグ、ブロックに加え、課題だったトス回しも向上した。日本代表デビューから10年、苦境を乗り越えながら成長を遂げてきた宮下が、東京五輪の正セッター争いをさらに過熱させそうだ。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る