「変人」宮下遥がトス回しで成長。全日本の正セッターを再奪取なるか (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 黒羽白●撮影 Kurobane Shiro

 攻撃的なツーアタックが特徴の冨永こよみ、リオ五輪経験者の田代佳奈美、バルセロナ五輪の男子チームの正セッター・松田明彦が育てた佐藤美弥と、ライバルのセッターたちが台頭。宮下も登録メンバーには名を連ねていたが、ケガの影響もあって大きな大会には招集されなくなっていた。

 2年ぶりに代表に復帰した昨年のワールドカップでも、正セッターを務めたのは佐藤。宮下は、前衛に上がってきたセッターと、その対角にいるライトアタッカーを同時に交代させる「2枚替え」での起用が多くなった。それでも宮下は、短い出場時間できっちりと結果を出し、久々の国際舞台で存在感を発揮した。

 迎えた今季のVリーグでは、ワールドカップの疲労もあって宇賀神みずきとの併用になりながらも、チームを鼓舞して決勝の場まで導いた。2009年にVリーグ最年少デビュー(14歳8カ月)を果たしてから、チームでは常に正セッターだった宮下だが、「私がいない間はみずきがチームをまとめてくれて、『みずきのチーム』になっていたこともありました。途中で私が出ていって違う間を作ると、相手は嫌だろうなと。そこは今季のチームの武器だったと思います」と、淡々とした口調で話した。

 しかし岡山の河本昭義監督は、「謙虚そうなことを言っていますけど、彼女はすごく気が強い選手なんですよ」と笑いながら、宮下について次のように語った。

「うちはミドルブロッカーに上背がなく、ボールがずれた時のパンチ力もない。だけど(セミファイナルで戦った)デンソーさんはミドルが機能しないとしんどいので、宮下は3セットまですごく強引にミドルを使いました。それが象徴しているように、彼女は自分やチームが苦手なことをあえて挑戦したがる、いい意味での"変人"だと思っています」

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