「日本の柱」石川祐希はイタリアで
やるべきことを知っている

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki
  • photo by Sakamoto Kiyoshi/AFLO

 バレーボール男子のワールドカップ(W杯)が終了してから2日後の10月17日。熱気が冷めやらぬ中、石川祐希の姿が成田空港にあった。10月20日に始まるイタリア1部リーグでのプレーに向け、契約したパドバに合流するためだ。


W杯を終え、イタリアに向けて出発する石川W杯を終え、イタリアに向けて出発する石川 報道陣に囲まれて取材を受ける石川。それを見つけた空港にいる旅行客が、スマートフォンを向けて写真を撮る。W杯での活躍で、日本のエースの注目度が上がったことは間違いない。

「これからすぐにシーズンが始まる。その先に五輪を見据えているので、そこで結果を出すために、シーズンをより充実したものにしたい」

 そして、決意を込めてこう言った。

「また強くなって、日本に帰ってきたいと思います」

 自身2回目の出場となったW杯は、19歳で初出場した前回とは立場が異なり、求められるものも違った。それは十分に自覚していた。大会前には「まだ年齢的には下から2番目だけど、代表歴でいうと上になる。チームを引っ張っていく、といったことを考えて臨む大会になる」と話していた。

 W杯本番では、その言葉どおりの活躍を見せた。苦しい場面でトスが上がっても、3枚ブロックにつかれても、鋭く打ち抜いて得点を積み重ねていく。全体5位となる159点を挙げ、スパイク決定率では52.09%という高い数字を残した。スパイクの総数は、チームでもっとも多い263本。守ってはチーム2番目の183本ものサーブを受けた。まさに「日本のエース」と呼ぶにふさわしい活躍ぶりだった。

 プレー面だけでなく、精神面でも確かな進化を見せた。

 フルセットの激闘を制した10月11日のエジプト戦。19歳にしてオポジットのレギュラーを張る西田有志(ジェイテクト)が、第4セット終盤に乱調に陥った。スパイクをネットにかけ、ブロックされ、アウトにしてしまう。それが原因となって19-16の3点差を守り切れずに逆転でセットを落とした。そのまま負けのムードになってもおかしくない中で、石川は周囲にこう声をかけた。

「西田は大丈夫だから、ほかでカバーしよう」

 あえて鼓舞せず、慰めもしない。それは、しっかりと考えての言動だった。

「彼が悩んだりするとよくないので、『気にするな、思い切りプレーしろ』と。ほかの選手にも、たくさん声をかけすぎてもよくないと思ったので」

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