日本バレーが28年ぶりの4位と躍進。
2つの武器が好調の要因だった

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki
  • photo by Kyodo News

 一夕一朝でサーブがよくなったわけではない。日本は長年にわたってサーブが課題だと言われてきた。当然、中垣内監督も就任当初からサーブの強化を掲げていた。バレーボールにおいて、サーブは他者が介在しない唯一のプレーゆえ、個の能力に依存する。「西田の登場は大きい」と指揮官が言うように、19歳のサウスポーなしには語れないが、そこにはチームとして着実な進歩があった。

 西田と石川。2人のビッグサーバーを最大限に生かすため、チーム内での決めごとがあったと柳田は言う。

「攻めるというのが大前提。だけど、ミスが重なってくると、誰かがマネジメントして、誰が強く打つのかを確認する。例えば、西田と石川だけをしっかり打たせて、ミスがかさまないようにする、といったように」

 それは、ワールドカップ直前の9月21日まで行なわれたアジア選手権で、3位にとどまった時の反省でもあった。

「アジア選手権の韓国戦でサーブミスがかさんで、その対処ができないままゲームが進んでいったのが反省になっている。どんどん打っていくのはいいことだけど、その後の展開に意図がないなら、関田みたいに前に落としていくとか。たくさんの引き出しがうちにはあるので、いろんなことができる」(柳田)

 強く打つ時と戦術的にコースを狙うサーブを使い分け、ミスが続かないように意識していた。その結果、チームとしてサーブが機能したのだ。

【東京五輪に向けた収穫と課題】

 イランに3-1で勝った10月13日の試合後、中垣内監督はコートでクールダウンする石川と福澤に、翌日のブラジル戦に出場するかどうかを問うた。監督とフィリップ・ブラン・コーチは当初、コンディションを優先するために2人や西田を先発させないプランを考えていた。しかし、2人の回答は「出場したい」。福澤は理由をこう説明した。

「ブラジルが強いのはわかっているけど、自分たちの立ち位置が世界の中でどこにあるのか。それを計る意味でも、すごく重要な大事な試合だった」

 世界のトップとの差を知るために挑んだブラジル戦。第1セットを先取されて迎えた第2セット、2016年リオデジャネイロ五輪王者で20年以上世界ランキング1位に君臨する相手と、日本は"がっぷり四つ"に組んだ。山内晶大(パナソニック)や西田が序盤でサービスエースを奪ってリズムをつかむ。反撃に遭って逆転されても、再び強いサーブで攻め返すなど一歩も引かなかった。

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