女子バレーで課題が露わ。佐藤美弥を苦しめた「間」と魔のS4ローテ (2ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki
  • photo by Kyodo News

 ラリー中の1本目に"間"を作り、できるだけ多くのアタッカーに攻撃参加させる。徐々に形になり始めたのが大阪での最後の3連戦だった。最初のセルビア戦後、中田監督はこう言った。

「ラリーが続いたら、少し"間"を持たせるためにパスを高めに返しなさいという話をした。そのことによって、ミドルブロッカーも十分に"間"を取れるようになったのかなと思います」

 もともと「チームがバタバタしているのに、早くパスを持っていくという発想は絶対違う。ラリーが続いたときに1回"間を作る"という意味で、高くコントロールすることはすごく大事。昔から、何が何でも『全部早く持っていけ』と言っているわけではない」と中田監督は言う。しかし、それがきちんと浸透していなかったのだろう。

 1回目のパスを高く上げる。それで得られる"間"は、時間にすればほんのわずかだ。しかし、ボールがほんの何十センチ、何メートルか高く上げられることによって、そこには時間が生まれる。そのわずかな"間"が、多くの攻撃参加を促すことにつながるのだ。

 セルビア戦では、試合途中からミドルブロッカーの奥村麻依(デンソーエアリービーズ)と芥川愛加(JTマーヴェラス)が、ラリー中でもコートを駆け回って攻撃に参加する機会が増え、スパイク打数が増えた。ライト側からの攻撃も効果的だった。必然的に相手のマークは分散し、「レフト偏重」と言われていた時よりも、石井や鍋谷友理枝(デンソーエアリービーズ)のレフト側からの攻撃が生きた。

「チームで1本目に"間"を作って、ミドルブロッカーもちゃんと攻撃に入ってこられるように、全員が攻撃に参加できるようにって(監督が)言ってくれて。本当にリズムが作りやすかった」と、セッター佐藤も効果を実感していた。

 相手あってのことなので一概には言えないが、大会序盤の横浜での戦いぶりとは明らかに違う。エースとして今大会の攻撃を引っ張り、チーム最多となる158点のスパイク得点を挙げた石井は、その成果をこう言った。

「偏りがなく、バックアタックを含めて、みんなが同じ打数になれば相手も惑わされる。私自身も仕掛けていける。監督のワンフレームバレーも取り入れつつ、"間"を作るところは作っていくことができたのが大阪ラウンドだった」

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