西田有志が成長も石川祐希の負担は大。日本の明確な狙いが見出せない (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 全日本が昨年の同大会を2チームの日替わりで戦っていたことを考えると、今大会は石川、西田、小野寺を軸としたチームづくりを見据えていたのかもしれない。東京五輪に開催国枠で出場する全日本は予選を戦わないため、限られた国際大会で"世界に勝てるチーム"の形を探ることは重要だ。

 しかしそう考えると、第4週のアメリカ戦で石川を出場させなかったことには疑問が残る。アメリカは今大会の予選こそ6位だったものの、2016年のリオ五輪で銅メダルを獲得するなど、現時点で世界ランキング2位の強豪国だ。収穫と課題を多く得られることが期待できる格好の相手に、それまでの試合で判断したベストな形をぶつけてみてもよかったのではないかと思う。

 もちろん石川の疲労を考慮された部分もあるだろうが、それならば、第3週の最後に戦ったオーストラリアや、アメリカと同じ第4週に戦った中国など、予選で負けが込んでいた"格下"のチームとの試合で休ませることも可能だった。また、力の劣るチームに対して確実に勝ちを拾うことを目標にしていたとするなら、昨年のようにメンバーを入れ替え、ケガを考慮しながら戦ってもよかったはずだ。

 西田と小野寺は予選ラウンドを乗り切ったものの、石川は第5週第2試合のポルトガル戦でケガを負い、戦線離脱を余儀なくされた。もちろん疲労がすべての原因とは言い切れない。しかし石川が、リーダーとしてチームをけん引する役割も担っていたことを忘れてはいけない。

 中垣内祐一監督は、今季の石川に「リーダーシップも求める」と語っていた。石川は高校、大学で主将の経験があるが、サーブレシーブにも入るなど全日本の"攻守の要"であるエースにかかる負担は大きかっただろう。本来であれば、主将の柳田将洋がけん引役の一翼を担うのだが、2月上旬に負ったケガから戻ってきたばかり。出場数も抑えられていたため、コート上でチームを盛り立てられる試合は限られてしまった。

 リーダー気質の選手が多すぎてもバランスが悪くなるリスクがある。それでも、現在の全日本にはそんな選手が足りない印象を受けた。さらに大きなプレッシャーがかかる東京五輪でも、石川と柳田のどちらかがチームを離れざるを得ないケースを想定しておくべきだろう。

 精神的な負担を軽減させるため、長く全日本で戦ってきた、リーダーシップもあるベテランを入れるのも手だ。そういったメンバー構成を含め、まずは9月のアジア選手権、そして日本で開催される10月のワールドカップにどう臨むかに注目したい。

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