2019.04.12

Vリーグ史上最大の下剋上へ。東レのエース黒後愛が「執粘」を見せる

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 堀江丈●撮影 photo by Horie Joe

 この状況を見て、2010年のプロ野球で起こった「史上最大の下剋上」を思い浮かべるファンもいるだろう。その年のパ・リーグ3位でクライマックスシリーズに進出したロッテは、同2位の西武、同1位のソフトバンクを連破して日本シリーズに進み、セ・リーグ覇者の中日も破って日本一に上り詰めた。プレーオフの様式は違えど、バレー界にとって今回の東レの快進撃は、その"歴史的快挙"と重なるほどの出来事なのだ。

 そんな東レをけん引するのは、今シーズンが2年目の黒後だ。

 大山加奈、荒木絵里香、木村沙織らを輩出した名門・下北沢成徳高校出身。力強いスパイクとチャーミングな笑顔が魅力の20歳のレフトスパイカーは、昨年はシニアの全日本メンバーとしても活躍し、中田久美監督から「今年度は黒後愛と古賀紗理那を育てるのが目標だった。その目標はある程度達成できたと思います」と好評価を得た。また、初めて出場した世界選手権の初戦を終えた後に「やばいくらい全然緊張しませんでした!」とコメントするなど、その"大物ぶり"は周囲を驚かせた。

 今シーズンの「V.LEAGUE」レギュラーラウンドでも、東西カンファレンスの全チームの中で総得点ランキング5位(日本人選手では1位)と活躍。それでも、JTに先勝された「ファイナル3」の第1戦の後には「めちゃくちゃ緊張しちゃいました」と頭をかいた。

 第1戦を落としたことで「ますます緊張した」と言うが、「(試合が始まって)チームメイトを見ていたら、だんだん落ち着くことができました」と硬さが取れ、第2戦では45本スパイクを打って18得点を記録。相手からサーブで狙われることも多かったが、安定したレシーブで攻撃のリズムを作った。"一発勝負"の「ゴールデンセット」では1得点にとどまったものの、チームに勢いをもたらしたのは間違いなく黒後だった。

 そうして辿り着いたグランドファイナルの第1戦は、序盤から久光製薬に先行される展開になった。第1セットを失うと、第2セットは25-13という大差で落としてセットカウント0-2。続く第3セットは、第2セットの途中から投入された、全日本男子のエース・石川祐希の妹である石川真佑が流れを変えて一進一退の攻防に。なんとか粘ってデュースに持ち込んだが、25-27で久光に押し切られた。