「早く問題提起すべきだった」柳田将洋が悔やむ自身と全日本の未熟さ (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

現在は帰国し、ケガの治療に専念している photo by Nakanishi Mikari現在は帰国し、ケガの治療に専念している photo by Nakanishi Mikari――そんな古賀選手や、石川選手と共に戦い、自らは主将として臨んだ2018年度の全日本を振り返っていかがですか?

「まず個人としては、レギュラーとして出られなかった試合もありますし、普段と違うオポジットとして出場したこともありましたが、結果が出せませんでした。大きな大会、大事なところで力が発揮できなかったことは、大きな反省点です。

 チームとしては、サーブで攻めて、(相手の攻撃の選択肢を)絞ろうという戦術を柱に戦えたと思います。でも、それに相手が対応してきた時に、自分たちがさらに上回ることができなかった。もう何年も前から言われ続けていることではあるんですけど、いい戦いを持続することをノーマルにしないといけないですね」

――昨年度にチームが目標としていた、「速いバレー」は実現できたのでしょうか。

「『速いバレー』を掲げたことは、チームが一丸となって強くなるための目標として重要だったと思いますし、昨年度はそこにトライし続けることもできました。ただ、今後も『速いバレー』を目指すのであれば、『何がどう速ければ相手にとって脅威なのか』を突き詰めないといけないと思います」

――この取材に先立ち、石川選手に同じ質問をした時も、やはり『何を、どう速くするのか』を課題に挙げていました。

「選手個人の意見でチームのすべてが決まるわけではないですけど、キャプテンだった僕がもっと早く問題提起できていたら、いろんな議論ができて昨シーズンのうちに改善できていたかもしれない。そう思うと、自分の行動力やバレーを見る力など、未熟な部分がまだまだあるなと感じます。ネガティブな面について発言することが、チームにとってポジティブな効果をもたらすことがあると、認識をあらためて今後に臨みたいです」

――全日本がさらに強くなるために必要なことは?

「バレーボールをもっと理解することだと思います。それによって、どういった状況判断が必要になるのか、どんなスキルを高めるべきなのかが、よりはっきり見えてくる。世界の強豪に追いつき、追い越すためには、チーム全体でそういう意識を持つことが必要だと考えています」

――今はコンディションを整えることが最優先だと思いますが、全日本への意気込みを教えてください。

「ケガを治した後、いつチームに招集してもらえるかはわかりませんが、少なくとも今年の10月に日本(広島)で行なわれるワールドカップには出場して、しっかり結果を出したいですね。個人としてもチームとしても、いい意味で危機感を刺激にして前に進んでいきたいです」

 このインタビュー後、リーグを離れて日本での治療を決断した柳田は、自身のSNS上で次のように復帰への思いを語った。

「今はリハビリとトレーニングの繰り返しで、バレーボールからここまで長いこと離れたのは初めてですが、毎日つきっきりでサポートしてくださる人がいたり、自分の思うことを好きなだけ話せる仲間もできました。こうなってよかったとは思わないけど、こうなったことでしかできなかった関係と時間に充実感と感謝をしながら進められています。これからはまた先のことを見据え、次のステージで絶対にコートに戻ってきます」

 ケガを癒してコートに戻ってきた時、柳田はどんな力をチームにもたらしてくれるのか。ポーランドで頼もしさを増した26歳のチームリーダーの帰還を、すべてのバレーボールファンが心待ちにしている。

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