全日本で圧倒的な存在感。荒木絵里香は10年前より「成長している」 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

――そういったスキルを上げるためにも国内のリーグが大事になると思いますが、"ママさんアスリート"として「V.LEAGUE」で活躍されている全日本の選手は荒木選手だけです。ロンドン五輪の翌年に休養し、出産を経て1年足らずでコートに戻るという流れは事前に考えていたのですか?

「そうですね。約10年間、国内リーグと全日本で試合を繰り返してきて、ロンドン五輪で銅メダルを獲得できた達成感がありましたし、環境を変えるなら今かなと。バレーを長く続けたかったので、夫や母と相談して休養と復帰の時期を決めました。

 復帰後、『また全日本に』と打診された際は悩みましたけどね。代表に入ったら海外での試合がありますし、夫にも仕事がある。母が子育てをサポートしてくれなければ、もう一度全日本で戦う決意はできなかったと思います。今もかなり助けてもらっているので、本当に感謝しています」

――娘さんは来年1月で5歳になりますが、日本で行なわれた世界選手権の試合も観戦に来てくれたそうですね。

「はい、何試合か。いざ会場に来たら、ゲームなどをしてあまり試合を見ていなかったみたいですけど(笑)。でも、家を出る時はいつも『フレー、フレー、ママ!』と応援してくれます。それはすごく励みになりますね」

――復帰後も全日本のレギュラーとして活躍されていますが、「自分の立場を脅かすような若手の選手が出てきてほしい」という思いもありますか?

「それは私がどうこう言えることではないですけど、この先の全日本を考えると、もっと出てきてもいいですよね。私のサイズ(186cm)以上で動けるミドルブロッカーとなるとなかなか......。でも、タイのチームに移籍した(奥村)麻依とかもあの身長(177cm)ですごく頑張っているし、機動力があるので私も学ぶことがたくさんある。互いに成長しながら東京五輪を目指せたらと思います」

――荒木選手が東京五輪のメンバーに選ばれたら、大会期間中に36歳を迎えます。「30代後半のオリンピアン」というと、クインシーズを率いる多治見麻子監督も36歳で北京五輪を戦いました。

「麻子さんにはいつも、『大丈夫。いけるよ』と背中を押してもらっています。正直、2020年に東京でオリンピックが開催されると決まった時は、『もう少し早かったら......』と思ったこともありました。でも今は、自分に出場できるチャンスがあるので、チームで結果を残してそこにつなげたいです」

――現在、トヨタ車体クインシーズはウェスタンカンファレンスの3位(7勝3敗)で、1位の久光製薬スプリングスとは2ポイント差です。年明けに再開されるリーグに向けて目標を聞かせてください。

「優勝しかないです。昨季はチーム最高の3位になり、ここまでの戦いにも手応があります。自分の経験を少しでもチームに還元して、初優勝を目指します」

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