ヤバイくらい緊張しない黒後愛。
世界バレーで大器の片鱗を見せている

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 田代はこのときのことを、「愛は気持ちの強い選手なので、トスを上げ続ければきっと決めてくれると思っていました。1本決まらないからといって、順繰りに別の人に上げるのはよくないとも。彼女はエースなので、彼女に託しました」と振り返る。一方の黒後も、反省の色を見せながら力強くこう述べた。

「3本続けて上げてくれたのはうれしかったですけど、1本目の被ブロックはともかく、2本目のミスはチームにとっていらない。それをなくしていくことが今後の課題です。被ブロックを少なくすることはもちろんですが、ブロックされてしまったときは、その次のアタックをミスせず決めきれるようにしたい」

 第3セットは終盤で6点差を追いつかれる苦しい展開になった。その土壇場で中田久美監督は、長岡望悠と控えセッター冨永こよみを2枚替えで投入。すると長岡が思い切りのいいスパイクを決め、一瞬でまた新鍋理沙と田代に戻す采配で悪い流れを断ち切った。中田監督はその采配について「なんですかね? 勘?」と冗談交じりに振り返った。

 中田監督がチームの目標として掲げている「スピードバレー」については、カギを握る田代が「試合途中に少しトスが浮いていたので、途中からトスを低く、速めにするよう心がけました」と語れば、黒後も「サーブレシーブは、チームの約束事である速くて低いAパス(セッターが動かずにトスを上げられるサーブレシーブ)を上げられるように頑張りたいです。でも、Aパスにこだわりすぎず、サーブで失点しないことを一番にやっていきたいです」と、徐々に適応ができてきているようだ。

 4位に終わったアジア大会よりも「サーブレシーブはよくなったと思います」と、黒後は胸を張った。サーブで狙われることは多かったが、崩されてもサービスエースは許さず踏みとどまり、自分でトスを呼んで取り返す場面がよく見られた。

「今日(ドイツ戦)は速いテンポで、高いところで打ち抜くことができたと思います。先ほども言いましたが、それまではボールの下に入りすぎてしまうところを修正して、納得がいくスパイクが打てたのは今日だけなので、ここからが"始まり"ですね」

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