男子バレー惨敗問題。石川祐希の起用法で混乱。優先すべきは今か未来か (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by AP/AFLO

 一方で、これまでケガに悩まされてきた石川祐希は、今春から行なわれたネーションズリーグを欠場したことで体の状態はよかった。しかし、その大会である程度完成されたチームに遅れて合流することになったためか、チームに合わせきれなかった。特に、セッターの藤井直伸とのコンビが合わない。2戦目までは、大学時代に石川と、高校時代に柳田将洋と合わせてきた関田がスタメンだったが、西田の復帰と共に藤井がスタメンに戻った。

 4戦目のベルギー戦は、西田の連続サービスエースで第1セットを奪ったものの、それ以降は相手に対応されて逆転負け。試合後の中垣内監督には、報道陣から「なぜもっと控えの選手を使うなど手を打たなかったのか」と質問が飛んだ。

 このときのスターティングメンバーは、両サイドに石川とベテランの福澤達哉、オポジットに西田、セッターが藤井、ミドルブロッカーが山内晶大と伏見大和だった。質問における交代は、セッター、または福澤と柳田の点だっただろうが、中垣内監督は、自分に言い聞かせるようにこうコメントした。

「調子の上がらない石川を代えるべきだ、と何度もフィリップ(ブランコーチ)に言ったが、彼は聞き入れなかった。石川は、今大会はあまり精神的に充実していないのではないかと思う。それでも、浅野博亮を積極的に使えば失点は少なくなるかもしれないが、こじんまりとしてしまう。もっと強い相手に勝つために、これからも石川を軸にしていく」

 しかし結局、最終戦となったアルゼンチン戦で石川はスタメンから外れた。公式練習中の石川には笑顔が見られ、本人も「この試合に向けて気力は充実させられたと思います」と意気込みを語っていたが、公式練習が終わって一旦ベンチに戻った後にベンチスタートが言い渡された。

「2次ラウンドに行くために(セットカウント)3-0、3-1で勝たなければならない試合で、スタートから外される。それは信頼されていないからですし、まだまだ実力が足りないんだと思いました」

 その石川の途中出場の機会は思いがけない形で訪れた。試合の中盤で西田有志が後衛に下がった際、いわゆる「2枚替え」として石川がオポジットのポジションに入ったのである。これは練習でも試していなかった"ぶっつけ本番"の交代だった。

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