30歳の「ルーキー」。全日本バレーのお祭り男、高松卓矢が急成長中だ (4ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 浦川一憲●写真 photo by Urakawa Ikken

 ドラガンコーチは、メンタル面でも高松を支えた。昨シーズンのある試合に負けた後、試合中に息切れしてパフォーマンスが落ちたと感じた高松が意見を求めると、「まず、君は精神的に弱い人間じゃない。こんなにパフォーマンスを出せている選手が弱いはずがないんだ」と、プレッシャーへの立ち向かい方を話してくれたという。

「そのときのドラガンの言葉には感銘を受けました。『イゴールがケガをして、君に対するプレッシャーはすごく強くなるだろう。でも、そこは心配するところじゃない。君は強い。世界中の不幸が自分の背中に乗ってきても大丈夫。むしろ、全世界の不幸が集まってこいと思うくらいのメンタリティで試合に臨むことが大事だ』と。そういった考えを持てたら、試合なんか全然へっちゃらだと思えるようになりました。彼からはトレーニング以上に、心のあり方を学びましたね」

 そうしてどん底から這い上がった高松は、今年も全日本に招集され、4月に行なわれた紅白戦では白組のキャプテンを務めた。「キャプテンなんて慣れてないんで」と照れながらも、生き生きとチームを率いていた。

 そのときの紅組のキャプテンは、全日本の新しい主将を任された柳田将洋。高松と同じ186cmでオフェンス型のウィングスパイカーである柳田は強力なライバルになるが、高松は冷静に自分の立ち位置を分析していた。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る