小さいけど存在感は大。男子バレー全日本178cmアタッカーの正体 (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 浦川一憲●写真 photo by Urakawa Ikken

「2016年に膝をケガして考え方が変わりました。靭帯を切ったことで引退も頭をよぎったんですが、そこからは『みっともなくても、なんとしてでも全日本にしがみついてやろう』と思うようになったんです。昨年のグラチャンでは少しだけリベロとして出場し、そこでレセプション(サーブレシーブ)やディグ(スパイクレシーブ)、2段トスも上げられた。そこでひと通りできたことが、今の糧(かて)になっています。

 東京五輪のメンバーに残ることを考えた時、リベロをやった経験があることは"売り"にできると思うんです。オリンピックは他の大会と違って、リベロがひとりしか登録できない。その選手が大会中に故障したらピンチですが、僕がいればすぐに対応できる。そうでなければ普通にサイドアタッカーとして使えるとなれば、便利ですもんね」

 そう思えるのも、今年度のチームにサイドアタッカーとして招集されたからこそ。今回もリベロとして呼ばれたら、もう辞退しようと決めていたという。身長が低いアタッカーとしてレセプションは重視しているが、攻撃力が落ちてもいいとは考えない。スパイクの打ち方も上背のあるアタッカーとは違う。

「中学までは余裕でアタックラインの内側に打ち込んでいました。今の石川とか柳田みたいにかっこよく(笑)。『ここに打つ』と決めて、そこに実際に打てていた。だけど、高校に入ってネットの高さが上がってそういう決め方ができなくなってからは、ブロックを利用して打つことを意識しています。それは国内、世界の試合でも変わらない。僕からしたらどんな試合でもブロックは高いので、そこでどう決められるかだけを考えています」

 全日本メンバーに招集されるまで、世界を相手に戦うことは考えていなかった浅野。しかし今では、「(全日本で)美味しい蜜を吸って、逃げられなくなってる(笑)」と執着心が生まれ、それが成長の原動力になっている。

「ここ3年は"陰の全日本"だったので、そろそろ表に行きたいですね」

 自らを客観的に分析しながら、胸のうちに野心を抱く小さなアタッカーは、虎視眈々と"全日本の顔"を狙っている。

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