中田監督も迷う。グラチャンで全日本女子の正セッターは誰なのか (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 しかし、アジア選手権の決勝で冨永が巻き返す。この試合、スターティングメンバーは佐藤だったが、タイに攻撃が読まれて先制を許した。2セット目もミスが目立ったため、中田監督は冨永にスイッチ。荒木絵里香や鍋谷友理枝など、途中から投入されたメンバーと共に3セットを奪い返す大逆転を呼び込んだ。中田監督は大会後、「セッターって、本当に大事なんだと思わされた大会でした」としみじみと振り返っている。

 この試合は、"決勝戦に弱い"という佐藤の弱点が露呈した。過去に、Vリーグ決勝や皇后杯決勝でもトスを読まれ、焦りによるミスや被ブロックを多発して負けた苦い経験がある。また、中田監督をはじめ、日本女子のセッターはリベロ顔負けにディグ(スパイクレシーブ)がいいという伝統があるが、佐藤はそこにやや難がある。

 だが、速いトスでミドルブロッカーを使う攻撃は大きな武器だ。所属する日立での、バルセロナ五輪に出場した男子チームの正セッターを務めた松田明彦監督(今春で辞任)の指導の成果だろう。それに対して冨永は、アタッカーだった経験を活かして、鋭いツーアタックをバンバン打つことができる攻撃力が強み。ここまでは、それぞれの特長が出ているため、中田監督は1日の会見で「セッターをどちらに固定するかは、非常に困っています」と、嬉しい悲鳴を上げていた。

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