木村沙織が涙で振り返った、激動のバレーボール人生と今後のビジョン (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

引退報告会では、何度も涙を拭いながら質問に答えた引退報告会では、何度も涙を拭いながら質問に答えた 3月5日の最後の公式戦では、「絶対泣かないと決めていた」と終始笑顔だった木村だが、この日は何度も大粒の涙を落とし、声を詰まらせた。その胸に蘇ったのは、成徳学園高校(現在の下北沢成徳高校)を卒業してからも実業団でバレーを続けるか迷っていた時に、母の朋子さんにかけられた言葉だった。「そっち(実業団でプレーする道)もあるけど、大学っていう道も普通ならある。バレーボールが全てじゃないから、大学を選んでもいいよ」と言われ、木村はハッとしたという。「あ、そういう道を選んでもいいんだ」と。

 最近になってそのことを朋子さんに聞いた際には、「そうは言ったけど、絶対バレーに進むと思ってたから」と笑われたらしい。その通りに東レアローズでバレーを続けることになった木村。「バレーが人生の全てではない」と気づいたことが、逆に「いつ辞めても後悔しないように全力を尽くそう」という気持ちにつながった。

 高校の先輩で、日本代表でも共にプレーした大山加奈や荒木絵里香などには、「こんなに沙織が長くやるとは思わなかった。『この大会が終わったら辞める』って何度も言ってたよね」と笑われるそうだ。ロンドン五輪の後も、2015年のワールドカップ終了後に辞めようと思っていたことを明かしたが、それは、木村が目標に向かって常に全力を尽くしていた証(あかし)でもある。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る