大林素子さんが「愛のムチ」。女子バレーは東京へ大型選手育成を急げ (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by JMPA


――予選4位、とはいえ今回優勝の中国も4位抜け。可能性は閉ざされたわけではありませんでしたが、決勝トーナメントに向けて、チームの雰囲気はどうだったのでしょう。

「グループ予選最後のアルゼンチン戦の前、唯一練習公開がありました。その時の雰囲気も、囲み取材ができたのは木村(沙織)と荒木(絵里香)と宮下(遥)だけで、他の選手には声もかけられない感じで、かなりピリピリしていました。空気は重かったし、宮下のコメントも、自信を失っていたので、『私はトスでまったく貢献できてないので、サーブとレシーブで頑張ります』。追い込まれちゃってかわいそうでした。初めてのオリンピックのプレッシャーなどで、苦しいまま試合に突入して、そのまま終わっちゃったのかな。

 すでにメダルというものが、彼女たちの中で途中からすごく遠いものになってしまった。『とにかく(予選最終戦の)アルゼンチンにだけは勝たなきゃ』っていうものになってしまった。韓国戦に負けてから、誰も『メダルに向けて』というコメントをしなくなった。ハッタリでもいいからそれを言える人がもしいたら、また違ったのかもしれない。

 でも、今回のメンバーはみんなすごくまじめだし、謙虚だし、おとなしい。迫田(さおり)がひとりムードを変えてくれたけど、調子のいい人に乗っていけるムードがなかった。木村の、『最後のボールが落ちる瞬間まであきらめない』というコメントを聞いて、『メダルはないな』と思いました」

――「チームワーク」がカギだと眞鍋(政義)監督が言い続けていましたが。

「眞鍋さんが作ってきた道筋は間違ってない。それがあったからここまで来られた。"ハイブリッド6"とか、いろいろな戦術やシステムを試して、模索してきたけど、強豪国には追いつかなかった。敗因はチームワークではなく、もっと技術的なもの。具体的に言えば、セッター竹下(佳江)、リベロ佐野(優子)の穴。チームワークだけでは、埋められないものがありましたね。

 チームワークという点では、みんなで一生懸命やろうという雰囲気はありました。でも、苦しいときにズルズルっといってしまった。誰か先頭を走ってアピールできる選手がほしいですよね。おとなしい、いい子たちだけだとそれが難しい。ロンドンのときはやっぱり竹下がいたし、アテネは吉原(知子)がいた。引っ張ってくれる人がいるときの方が、流れを作れる」

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