【男子バレー】天国と地獄を知る清水邦広。リオ最終予選に懸ける思い (2ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro   坂本 清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

「今度は、僕が若手にその言葉を伝える番なんですが、石川(祐希)や柳田(将洋)は、僕が言わずともそれができています。当時の僕より、よっぽどたくましいです」

 今、8年前の自身に重なるような、大学生や若手の逸材がチームメイトに加わっている。

「石川は怖いもの知らず。フィジカル、メンタル、テクニック、すべてを兼ね備え、僕の出会った選手の中でも間違いなくNo. 1の素材です。現時点ですら、僕が石川から学ばなければいけないことがあるほど。柳田は、全日本であることを誇りに思う情熱が誰よりも強い。向上心の塊のような選手です。今は、自分が決めきれなくても石川、柳田たちがいる。マークも分散されるので、彼らの存在は本当に大きいです」

 若手だけではない。清水は、かけがえのない友とリオを目指す。あの日の約束を果たすために。

 福澤達哉とは、高校時代から競い合い、大学生ながら共に全日本に選出され、天国と地獄を味わった仲だ。

「福澤は今もライバルであり、チームメイトであり、何より親友です。一番、僕のことをわかってくれているし、僕も福澤のことを誰よりもわかっていると思っています」

 そんな福澤が、昨年は全日本に選出されなかった。落ち込む福澤を清水が食事に誘うと、普段はクールな福澤が、『俺は落ちたけど、お前は頑張れよ』と声を振り絞り大粒の涙をこぼしたという。それは、清水が初めて見た親友の涙だった。今年、親友は全日本に返り咲き、再びチームメイトとなった。ただ、清水は「特に感慨はない」と言う。

 「絶対に戻ってくるってわかってたんで。あの日、『もう一度五輪に一緒に行くぞ』って約束しましたから」

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