【女子バレー】ハイブリッド6のキーマン、宮下遥の心意気 (4ページ目)

  • 中西美雁●文・写真 text &photo by Nakanishi Mikari

 気持ちはすでに、11月15日に開幕するVリーグ。彼女にとって、そこは代表戦の課題をこなす場ではない。目指すは優勝。岡山は一昨年4位、昨年2位とじりじりと順位を上げてきている。

「今年は選手の入れ替えがあった年でもありますし、新しい選手と今までの選手が上手くかみ合えば優勝も狙えると思います」

 ちょっと意地悪な質問をぶつけてみた。

――このチームには負けたくないとかありますか

「個人的にでいいんですか。まず、上尾さん、日立さん、(トヨタ)車体さんには絶対負けたくないですね! (強豪チームの)久光さんとか、東レさんには、最後の大事な試合で勝てればいいかなと思っています。順位が関わってくるような試合で。ずっと勝ち続けることはできないので」

――今年から新しい方式(※2)でリーグが始まりますが。
(※2)今年から世界大会基準に倣い、ポイント方式に。また、レギュラーシーズンの順位をプレーオフに反映させ、ポストシーズンの長期化による、緊張感創出のため、ファイナルステージに進出できるチームは4チームから6チームに

「やっぱり勝てるときは全力で勝たなきゃ後々苦しくなる。リーグを通して新しい選手とどうかみあっていくかを探りながら、絶対的な力をファイナルに向けてつけていきたい」

――(2016年)リオデジャネイロ五輪のイメージはありますか?

「リオはまだ……。まだっていうか、あんまり強く思わないんですけど、去年、東京が決まって、私もそこを目指せる立場にあるので、あと6年? 6年後って、あっという間だと思うので、6年後の東京オリンピックで最高のパフォーマンスが出せるように、1年1年というより1日1日を大事にして積み重ねていきたい。

 課題は、言い出したら切りがないんですけど、体力とか技術というのは心があれば何とでも補えるものだと思うので、どんな時でもぶれない心、(チームメイトに)いい安心感を与えられるような心を強く持つことです。まず心ありきです」

 個人的には、もっと欲張って、リオでも正セッターの座をつかみ、自らの手でリオ五輪の出場権を取り、そして本大会でも勝利をもぎ取って、その上で東京五輪に臨んで欲しい。数日前に取材させてもらった東洋の魔女の井戸川(旧姓・谷田)絹子さんは、「金メダルポイントでは、全員が『私が決めてやる』という思いでいました」と語ってくれた。彼女たちには「自国開催だから出場枠を争わなくてよかった」という気持ちはみじんもなかっただろう。それくらいの気持ちの強さがなければ、いくら自国開催であっても金メダルを獲ることはかなわないのではないだろうか。

 最後に、今癒やしになるもの、くつろげるものは?と質問すると、ふっと表情が和らぎ、女の子の顔を見せた。

「最近は香り、アロマがすごく好きで、部屋でアロマを焚いたりしてます。グレープフルーツの香りがすごく好きなんです」

 今のバレーボールのスケジュールでは、代表選手となると、1年中、練習、試合をこなし、まとまったオフはほとんどない。そして、弱冠20歳の司令塔にかかる期待は決して小さくない。グレープフルーツの香りで癒やされながら、心身の疲れを取り、モチベーションを保っていってほしい。まずは、Vリーグで、岡山を日本一に。それが実現してから聞く宮下の五輪への思いは、きっとまた今とは違ってくることだろう。

【profile】
宮下 遥(みやした・はるか)
1994年、三重県生まれ。Vプレミアリーグ・岡山シーガルズに所属。身長史上最年少15歳2ヶ月でプレミアデビューを果たし、注目を浴びる。昨年A代表デビュー。日本期待の大型セッター

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