【男子バレー】南部ジャパン、銀メダル以上の大きな収穫

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

 世界選手権に出場できなかった今年度、今大会は最も重要な大会として位置づけられ、当然結果を求められた。しかし、南部監督は積極的に若手を選抜し、かつコートにも立たせた。ミドル3名は全員が199㎝以上で1990年代生まれだ。また、星城高校時代に史上初6冠を達成した中央大1年の石川祐希、慶応大4年の柳田将洋にも出場の機会を与え続けた。緒戦サウジアラビア戦では大差をつけてから石川、柳田をそれぞれ投入。第2戦のパキスタン戦も、1セット目の終盤に、まず、石川をピンチサーバーとしてミドルブロッカーのところで起用し、サーブ順が終わってからも交代せず、またリベロとも代わらずコートに立たせ続けた。続いて、柳田も同じように起用した。

「少しでも国際大会の公式戦で、出場経験を積んで欲しかったからです。特に、レセプション(サーブレシーブ)を経験させたかった」(南部監督)。石川は第2セット以降、スタートから出場。この経験は後に生きることになった。

 クウェート戦ではスタメンとして起用された石川だが、サーブで狙われて崩され、ベテランの米山裕太に交代。「(レシーバーとレシーバーの間の)関係性を突かれてやられただけで、本人のスキル自体の問題ではありません」(南部監督)とのことだったが、タイ戦ではまったく出番がなく、続く中国戦でもピンチサーバーが一回のみ。こちらから質問をいろいろ投げかけても、本人のコメントは「別に......」「特にないです」と素っ気ないものだった。

 だがトーナメントに入った準々決勝、インドとの対戦で先に第1、第3セットをとられ、絶体絶命に陥った全日本を救ったのがこの石川だった。第3セットもリードされた終盤にピンチサーバーで投入されエースを奪ったが、あとがない第4セットのスタメンに石川を抜擢。「(試合に出られない間は)出たくて出たくて、ずっと、出られたらとにかくやってやろうと思っていました。プレッシャーは感じませんでした」との言葉通り、サーブにスパイクにブロックに大活躍。途中出場ながら16得点を挙げる働きを見せた。

 「予選で出ていたときは、正直初めてのシニアで戸惑うところもありました」と本音もちらり。「だけど、今日はそんなことを言っている場合ではないので、とにかく何とかしてやろうという気持ちだけしかありませんでした」

 司令塔の深津英臣も「今日は本当に大学生3人(石川、柳田、愛知学院大・山内晶大)に助けられた試合だったので感謝しています」、南部監督も「期待以上の働きをしてくれた」と合格点をつけた。

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