【女子バレー】世界選手権開幕! ハイブリッド6は通じるか? (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

 実は、「ハイブリッド6」という名前を聞いたときに筆者が最初に思ったのはこの「俺が6人いればいい」という言葉だった。今の全日本女子で言うなら、「木村沙織が6人」を狙うということなのかと。眞鍋監督の本音が冒頭に述べたようなマイナスからの発想だったとしても、木村の言葉からは結果的に「どんな役割もこなせる選手が6人」という理解で取り組んでいることがわかる。

 3度の五輪を経験した大林素子さんは、今回の新戦術について次のように述べた。

「ああいうシステムってある意味、原点なんですよ。中学校のときなんかは誰でも何でもできなきゃいけなかった。もちろんそれとは次元が違うんだけど、大筋では考え方は同じですよね。

 私自身も八王子実践で元々はセンターだったんです。全日本ではセンターをメインにやりつつ、レフトもやってました。長岡はずっとライトでやっていたので、ブロックのステップを含め大変なこともあるでしょうけど、そこは頑張って対応して欲しい。

(ハイブリッド6は)眞鍋さんの、『今のバレーで銅メダルを取れました。でも、だからこそ、今のままではそれ以上、上にはいけない』という思いが伝わってきます。勇気を持って改革したことが一番すごい。それに選手が対応するのは、当たり前のことです。この先には、(ライト方面を向いてトスを上げる)逆セッターを期待してる。80年代に中田久美さんがやっていたことで、アタッカーのポジショニングも逆になります。相手ブロッカーがすごくやりにくいんですよ。そういった今までと違うことをもっと考えてらっしゃると思います。期待しています」

 また、アテネ五輪主将の吉原知子さんも、「私も現役の時、レフトもライトもセンターも全部求められていたので、今回のこの戦術に違和感はないですね。高いトスも低いトスも全部打てた方がいい。ただ、センターブロックというのは、左右に動く分だけサイドとは違う。そこだけ練習しないと、今ってサーブとブロックって重要なプレイなので、ブロックが全くないとつらいですよね。そこだけかな。

 相手に決められる前に決めなければならないので、コンセプトとしてはいいと思う。ポジションごとに区切ってその中での競争ではないところもいい。自分ができる攻撃をいっぱい持てば持つほど有利だし、その中から自分のスペシャリティを持ってほしいですね」とハイブリッド6を評価する。

 木村に「ここで新戦術を出してしまうと、リオ五輪の時までに対策されちゃうんではないかと思うんですが」と懸念をぶつけてみたが。

「試合の中で慣れていかなければならないので、いきなりオリンピックでやるというのは難しい。今から監督の理想とするチームに近づけるように、実戦の中で慣れていくしかない。まだ全然完成していませんし、攻撃のバリエーションももっとあると思いますし、出る選手によって、チームも変化していくと思う。全員が与えられた役割を全うすることで、監督がよく言うように、コートの上でハイブリッドというか、かけ合わさったり混ぜ合わさったりして、入ってるメンバーの中で、また違うチームができていく。それはグランプリの中で『あ、この選手が隣に来るとこういう攻撃もできるんだな』とか、隣にいる選手によってできることが変わってくるので楽しみに思うことがありました。これからも突き詰めていける余地はたくさんあると思います」

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