【女子バレー】世界選手権開幕! ハイブリッド6は通じるか?

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

 眞鍋監督に「ハイブリッド6について簡単に説明していただくと、どういう戦術なんですか?」とたずねると、「難しいことを言い出すといっぱいあるんですけど、端的に言うと、たくさん点を取れる選手をいっぺんにコートに入れる。それだけです。すごくシンプルです」

 MB1を披露した昨年秋のグラチャンでは、本来MBが入るべき位置にはサイドアタッカーの迫田さおりが入り、スパイク賞を獲っていた。ワールドグランプリでは、迫田が肩の故障で外れ、長岡がこの位置に入って、セカンド1サイドアタッカー賞を受賞した。世界選手権ではこの2人を一度にコートに投入することを当然視野に入れているだろう。

 元々は、過去5年間のデータからMBの得点力が低いこと判明して考案されたMB1だが、もう一つには、レセプション(サーブレシーブ)を行な1わない、攻撃力の高いサイドアタッカーが3名(長岡、迫田、江畑幸子)になったことから、この3人を同時にコートに入れたいと考えたことが発端となった。

 MB1以前も、江畑、迫田の2人の使い分けには頭を悩ませていたようだが、そこに長岡まで加わり、決断に至ったというわけだ。

 昨年のモントルー大会(※)など、あまり重要度の高くない大会では長岡にレセプションをさせたりしていたが、やはり相手から見るとサーブで狙うべき「穴」になり、また、レセプションしてから攻撃に入るのがなかなか難しかったようだ。

(※)毎年6月ごろ、スイス・モントルーで行われる女子バレーの国際大会。年度始まりの大会で、チーム状態をみたり、新しい戦術などがよく試される

 キャプテンの木村沙織に、今の時点で新戦術をひとことで言うと? と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「簡単に言うと、全員がリベロであり、全員がつなぎ役であり、全員がポイントを取れる選手が6人入って、ミックスしていろいろな戦術が組めるということだと思うんです。
ブロックは得意だけどスパイクで得点が取れない選手とかいろんな選手がいるんですけど、そういった偏りをなるべくなくして、スパイクもできるし、守備もできるし、ブロックもできるしという選手が、こういうチームにはたくさん必要になりますよね」

 これを聞いて思い出したのが、以前青山繁(バルセロナ五輪代表)とした「身長に恵まれない日本が、世界で勝つにはどうしたらいいのか」という雑談の中で、彼がにやりと笑って言った言葉だ。

「簡単なことだよ。俺が6人いればいい。俺がサーブ打って、俺がレシーブして、俺がトスあげて、俺がスパイクするの。リベロは要らないじゃん、だって俺が拾うんだもん。だから(前衛・バックアタック含めて)5カ所どこからでも打っていけるから、相手ブロックもどこについていいかわからないよね。これなら、でかい奴らに勝てる」

 青山は身長こそ187センチと低かったが、海外の選手にまで「アオヤマの技術を学びたい」と言われるほどのテクニシャンだった。スパイクだけ、レシーブだけ、といった特化型ではなく、すべての技術が優れた選手だった。

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