【女子バレー】眞鍋ジャパンの新戦術はポジションレス (2ページ目)

  • 中西美雁●文 photo&text by Nakanishi Mikari

 6月に姫路で行なわれた紅白戦を取材したカメラマンに、新戦術は何だったのかと聞くと、「MB0ですよ」と教えてくれた。だが、その後開幕したワールドグランプリ第1~第3ラウンドでは、単純な「MB0」にも見えなかった。これまでのラウンドを見ていると、たとえば長岡望悠といった本来サイドアタッカーの選手がミドルブロッカーの位置に入ってクイックやライト攻撃をしたり、セッターの宮下遥が真ん中でブロックに跳んでいたり、普通に大野果奈、山口舞のMB2人が入っていたり、いってしまうなら「ポジションレス」というべきシステムを導入していた。いや、導入しようと努力しているところだった。

「MB1というと、どうしてもMBが1人足りない、マイナスというイメージがあるじゃないですか。だから、もっとポジティブなイメージで命名しました」

 それがHybrid6である。ハイブリッドの意味は、掛け合わせる、混ぜ合わせる、新しいものを組み合わせるといったところ。日本には絶対的なエースがいないため、コートにいる6人全員にいろいろな役割を果たしてもらうことを前提に、こう命名したのだそうだ。

 しかしMB1がある意味で非常にわかりやすく、センセーショナルなネーミングだっただけに、若干インパクトと具体性に欠ける名称ではある。眞鍋監督に「具体的にはどんな戦術なんですか?」と質問したところ、以下のような答えが返ってきた。

「相手によって、MBが1人の時も2人の時も、0のときもあります。攻撃陣はポジションを固定しないで、1人が複数のポジションをこなします。常識や既成概念を捨て、ローテーションごとにそれぞれの選手が一番能力を発揮できるポジションを担う、一番得点できる6人を同時にコートに入れて戦うフォーメーションのことです。今、選手に言っているのは、パスを上げる人がパスヒッター、それ以外は全員ポイントを取るポイントゲッターだということ。ポジションの概念は払拭しよう、と」

 バレーボールは25点を先に3セット取ればいいスポーツ。そのために、得点力がある選手を同時にコートに投入することをまず考えたのだという。2年後のリオで金メダルを獲るためには、身長に劣る日本が常識的なことをしていては勝てない。以前からそんな信条を持っていた眞鍋監督は、2人サーブレシーブ制やリードブロック(相手がトスを上げるのを見てから跳ぶブロック)を導入して世界のバレーを変革した元アメリカ代表監督ダグビィル氏と話し、その思いを強くしたようだ。

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